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TEN DISTILLERIES 
KIRIN SEAGRAM 
1989-1990's 
720ml 43% 

グラス:テイスティンググラス
時期:開封後3ヶ月程度
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★★(5 ー6)

香り:華やかでオーキー、ほのかにエステリーでドライなアロマ。スワリングすると蜂蜜の甘みや微かに柑橘を思わせるニュアンスもあるが長くは持続せず、干し草やアーモンドの殻のようなドライな傾向に収束する。

味:スムーズだがややドライな飲み口。バニラや洋梨を思わせる甘みから、乾いたようなウッディーさと微かなピートのほろ苦さ。徐々にグレーンを思わせる蜂蜜、穀物系の甘みが開いてくる。

スコッチタイプの華やかなブレンデッド。モルティーで樽由来のニュアンスが序盤は主体的だが、奥にはグレーンの存在感もあって持続力は控えめ。少量加水すると熟成したスペイサイドモルトのような、林檎を思わせる華やかさ、蜜っぽいフルーティーさが開く。
ストレート、加水ともに瞬発的には6点、持続力を含めると5点といったところか・・・。

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今から30年前、1989年4月の酒税法改正と合わせてキリンシーグラムが作り上げたブレンデッドが、テン・ディスティラリーズ「10の蒸留所」。日本、イギリス、アメリカ、カナダ、4か国の蒸留所生産された原酒をブレンドしたその仕様は、所謂ワールドブレンデッドのはしりとも言えるものであり、先日レビューしたサントリーの新商品"碧"の存在もあって、今後何かと引き合いに出されるのではないかと思われる銘柄です。

テン・ディスティラリーズのブレンドの傾向はスコッチタイプであり、上述のサントリーの碧というよりは、どちらかと言えばイチローズモルトのワールドブレンデッドの系統言えます。ただ、海外原酒がブレンドされているのみならず、構成比率まで明記したリリースという点は、それまでの日本企業の商品では例を見ないものでした

この背景を考察すると、酒税法改正による新しい規制の中での商品を各社が計画していたこと。そこには、値下がりすることが明らかな輸入ウイスキーに対抗できる、従来の級別表記に依らない新しいブランド価値を確立する必要があったことが考えられます。
キリン・シーグラムは1972年にシーグラムとシーバス社による三社合弁で立ち上げられた経緯があり、海外大手との繋がりを初期から持っていたメーカーでした。そのため、輸入ウイスキーと同様の原酒が使われていることを逆にPRすることで、ブランド価値に繋げるという戦略は、選択肢のひとつとして違和感はないように思います。

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(イチローズモルトのリーフシリーズ・ホワイトラベル、ワールドブレンデッドウイスキー。こうした表記のはしりのひとつが、今回のTEN DISTILLERIESであると言える。)

さて、このテン・ディスティラリーズは、原酒構成比率を「キリンシーグラムの国際ネットワーク」によって調達した
・スコットランド産のモルト40%
・アメリカ産グレーン10%
・カナダ産グレーン10%
・日本産モルト・グレーン40%
として表記しています。
これは日本の原酒がどちらも富士御殿場でつくられたものと仮定すると、本家シーグラム傘下の9蒸留所で作られたものが、それぞれこれだけ使われているとも読めます。

飲んだ印象でのブレンド比率はモルト50%、グレーン50%程度。モルトの熟成感は8~15年程度で、日本の原酒は若かったのではないかと。それでも、瞬間的に感じられる華やかなフルーティーさはなかなか上質なものが感じられ、これをもたらしているのが、スコットランド産モルトの40%なのでしょう。
内訳を予想すると、グレンリベット、ストラスアイラ、グレンキース・・・あとはブレイバルやアルターベンなど、当時ブレンド向けとしても使われていたあたりと推察
アメリカ・カナダ側はグレーンとの記載なので、ブレンド向けに作られていたところから1つずつ2蒸留所と仮定して、それでも傘下のスコッチ蒸留所を全部使うと余裕で10を越えてしまいます。

当時のシーグラム社は、ウイスキー業界最大手の一つであり、多くの優良な蒸留所とブランドを傘下としていました。その恩恵を受けて、このテン・ディスティラリーズも今飲むと決して悪くない仕上がりではあります。
ただ、シーグラムの恩恵は1994年に社長が代替わりするまでのこと。その後は急転直下、盛者必衰の理が待っているのですが。。。その話はまたの機会に。
そしてこのテン・ディスティラリーは当時の日本には馴染まなかったのか、あるいは日本におけるウイスキー冬の時代の到来を受けてか、同じく1990年代中頃にひっそりと終売となっています。