カテゴリ:
LONGMORN
GORDON & MACPHAIL
CASK
Distilled 1969
1989-1990's
750ml 62.2%

グラス:リーデルコニャック
時期:不明
場所:BAR 水楢佳寿久
評価:★★★★★★★★(8ー9)

香り:角の取れたエステリーさ。土っぽさと合わせて熟したパイナップルやパッションフルーツのトロピカル要素と、アプリコットや黄桃などの色づいたフルーツ香が充実しており、グラスの中で発散するように開いてくる。紅茶を思わせるウッディネスも伴う。

味:口に含むとシロップ系の甘味からライチや黄桃、トロピカルな要素を含んだフルーティーさ。ボディはしっかりと厚みと勢いがあり、古典的なシェリー感と麦芽風味も奥から感じられる。
余韻は熟した果実のフェロモンを思わせる陶酔感を伴うフルーティーさとスパイシーな刺激、程よいタンニンを伴って長く続く。 

少し古酒っぽさが感じられたロットだが、本質的には充実したフルーティーさ、1960年代ロングモーンに求める要素がガッツリ備わっているリリース。
少量加水するとさらに熟した果実を思わせるニュアンスが開く。少しアイリッシュ系のトロピカル感も伴うように感じられた。


個人的に1960年代蒸留のロングモーンらしさを語る上で、避けて通れないと感じている1本。久々に飲みましたが、相変わらず素晴らしいですね。
このカスク1969のロングモーンは、度数違い(樽違い)でほぼ同年代詰のものが確か3種類リリースがあり、どれも秀逸な出来。熟成期間は20年少々、樽はリフィル系のシェリーカスクで勿論ソレラから産出されたと思われるもの。今思うと反則とも言えるスペックです。

1960年代蒸留ロングモーンは、トロピカル系統の香味とセットで語られることが多くあります。
ベースにあるのは麦芽風味と土っぽいピートの底支えにした、パイナップルや黄桃などの黄色系の果実のニュアンス。時に熟したような蜜っぽさ、フェロモンを思わせる陶酔感もあるわけですが、それは40年を越えるような長期熟成のものであっても、樽由来のドライでウッディなフレーバーの中で混じり合って主張してくる。シェリー系のリリースが多い1960年代にあって、濃厚なシェリー感でもこの要素がロングモーンたる個性を感じさせる要因に繋がっていると言えます。

その中で今回の60年代で20〜30年熟成あたりのロングモーンは、樽感、熟成感と共に酒質由来の要素も存在感があり、一つのピークに当たる時期だと感じています。
一方1970年代中頃からは、麦芽の変化、あるいは蒸留方式がスチームに切り替わった事なども少なからず影響しているのでしょうか。香味が徐々にドライになり、特に近年はこの酒質由来の要素が弱く、樽感主体なリリースが増えていくことになります。
素材由来で酒質そのものから湧き出てくるような。。。熟した果実から発せられるフェロモンに陶酔させられたかのような。。。まさに失われた味わい。
復活を信じたいものの、やはりこうしたリリースは飲めるうちに飲んでおきたい、今だから出来る贅沢だと思うのです。