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963-double-matured
963 DOUBLE MATURED
MALT & GRAIN FINE BLENDED WHISKY
Release in 2018 

グラス:SK2
場所:自宅
時期:開封後1ヶ月程度

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RED 500ml 46%
評価:★★★★(4)

やや焦げ感と樽由来の溶剤っぽさを伴うビターなアロマ。オレンジピール、微かにナッツ、時間経過でグレーン感が前に出てくる。若さ由来の酸味を伴う口当たりだが、余韻はほろ苦く奥には蜂蜜を思わせる甘みもある。

安価なブレンデッドにはない香味の起伏があるものの、それは言い換えればばらつきというか、まとまりのなさとも言える構成がこのボトルには感じられる。通常品は若い原酒のライトな構成で、そのベースに後熟の分の樽感が暴れている印象。

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BLACK 500ml 46%
評価:★★★★★(4-5)

チャーオーク由来のワックス感交じりのウッディネス、香り立ちはあまり強くはないが焦げた樹皮のようなスモーキーさがほのかに混じっている。
口当たりはピーティーでビター、焦げ感の奥にはグレーン由来の穀物感、ピリピリとした舌あたりに原酒の若さも多少感じるが、樽感でマスクされている。
余韻はスモーキーで根菜のようなニュアンスの混じるドライなフィニッシュ。

通常品はピーティーでクリア、若いカリラを思わせる味わいで、ハイボールに使いやすい印象であったところ。ダブルマチュアードはクリアな部分に樽感が加わり、これはこれという仕上がり。ロックで飲むとちょうど良い。

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AMBER 500ml 46%
評価:★★★★★(5)

オレンジキャンディーや蜂蜜を思わせる甘いアロマ。合わせて焦げた木材、シトラスのような少し尖った印象のある柑橘感、若いバーボンのような溶剤とウッディなえぐみを伴うニュアンスも。
口当たりは少しべたつきがあり、蜂蜜とシュガートースト、オレンジママレード。徐々にビターでピートの存在感。微かにスモーキーさも伴う。

焦げ感のある樽香と甘み、全体としては序盤は赤、終盤は黒に通じる要素がある一方、そのままだと樽感と合わせて荒い作りだったところ。シェリー系の原酒だろうか、それらを繋ぐ軸として仕事をしている印象を受けた。こちらもロックに使いやすい。

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福島県南酒販がギフトシーズンに向けてリリースした、963ブランドのアレンジ品と新商品。3本セットで同社WEB以外にビック酒販などでも販売されています。
同シリーズは、先月のウイスキーフェスティバルでもブースで展開されており、ツイッターなどに書かれた感想は概ね良好だったようです。

アレンジ品となる963赤ラベルと黒ラベルのダブルマチュアードは、それぞれ該当するブレンドをバーボン樽で再貯蔵したもの。日本の熟成環境からか比較的濃い樽感と共に、リチャーの影響か全て焦げたようなニュアンスを伴う味わいです。
今回は違いがわかりやすいよう、通常品(※ギフトセットには付属しません)と比較もしながら、テイスティングしてみました。 

赤ラベル、黒ラベル共に通常品はボディのそこまで厚くない、プレーンで若い輸入原酒主体のブレンドです。
どちらも追熟による樽感は強くあるのですが、黒の方がまとまって感じられ、赤の方がギラつくのは、樽の個体差というよりピートでカバーされている部分が大きいのかもしれません。
特に開封直後は後付けの樽由来の要素が目立っており、1ヶ月程度経って多少落ち着いてきた印象。

一方、新商品となるアンバー・ダブルマチュアードは、スペイサイド系の原酒をベースとした赤、アイラ系(というよりピーティーなハイランドか)の黒という2つのキャラクターのあわせ技と言える構成に、両者にはあまり使われていなかったシェリー系の原酒が加わっているのか、該当するニュアンスと共に幾分重みのある香味に仕上がっています。 
若い原酒の荒さはあるのですが、余韻にかけてのじわじわと広がるピーティーさは 、スコッチのブレンドにみられるキャラクターで、上手く作ってあるなと思います。


クラフトディスティラリーは大手メーカーほど原酒の種類がありません。
その中でスタンダード品を安定してリリースさせつつ、限定品も作らなければならない。難しい立場にある中で、ベースは同じでもフィニッシュで少し目先を変えるというのは有効な方法と言えます。

昨年、今年とリリースされた963ミズナラウッド17年は、ファースト、セカンドリリースともに中々の出来。ウイスキーの味の6割が樽によるものとすれば、これに習って例えば現地で育った栗や桜などの木材を後熟樽に使うのは、独自性を出せるテーマであり、探求することで各地の個性あるリリースに繋がるのではと感じています。