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QUEEN ANNE
Rare Scotch Whisky
1980's
750ml 43%

グラス:テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(6)

香り:香ばしくほのかにピーティーな香り立ち。乾いた穀物、麩菓子、奥にはおしろいを思わせる麦芽香。べっこう飴やオレンジピールを思わせるアクセント。

味:マイルドな口当たり。薄めた蜂蜜やべっこう飴、カルメ焼きを思わせる軽い香ばしさを伴う甘味、オレンジピールや干草、徐々にビター。
余韻は軽やかなスパイシーさを伴ってピーティー、ほろ苦くスモーキーでじんわりと消えていく。

際立ってモルティーでもスモーキーでも、そして樽感が強いわけでもないが、それらをバランス良く備えたスタンダードなスコッチウイスキーと言えるブレンドである。ハイボールにするとボディの軽さが目立つものの、原酒の素性の良さで嫌味なく飲み進められる。


ロングモーン、ベンリアック、そしてグレンリベットとグレングラントら、現代における名だたるスペイサイドの蒸留所を所有する、グレンリベット社傘下のヒル・トムソン社がリリースしていた輸出用銘柄。今回の1980年代流通品はヨーロッパ以外にアメリカ、南アフリカ、アジアと100カ国以上に輸出されていたとする記録も残っており、拡張路線が極まっていた時代であることが伺えます。

それを支えたのが、1977年に同社がシーグラム社の傘下となったことによる販路と原酒の提供でしょう。買収前の70年代と、80年代以降のクイーンアンでは香味構成にも変化が見られます。
1970年代に流通した、少し角ばったようなグリーントール時代(下写真)は、バニラや洋梨、あるいはポン菓子のような白色系の甘味を主体にした構成であるのに対し、80年代前半はカルメ焼きのような色づいた甘味とほろ苦さ、グレーン由来の風味と合わせてピートもそれなりに感じられます。

(クイーンアン1970年代流通。品の良いスタンダードタイプのブレンデッド。若いベンリアックを中心に、同量以上のグレーンを加えて組み上げたような印象。)

実はこのラベルのクイーンアン。80年代後半から90年代流通のものは飲んだことがあったのですが、通関コード付きの80年代前半は飲んでいませんでした。
取り立ててモルティーというわけではなく、グレーンも前世代同様あるいは少し多めくらいに使われているように思いますが、先に書いたように70年代から見てモルトの傾向に変化が見られたのは、時代背景から考察のしがいがあって興味深いです。

香味で近いタイプは同時期のハンドレットパイパーズとか、あとはロングジョン・スペシャルリザーブも似てる部分があるかな。
80年代後半の特級時代末期になると一気にライト路線になるのですが、この70年代から80年代初頭の2世代については、好みで選んで良いというか、少なくとも古いから良いとは言い難いように思います。