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ARRAN
DUTY PAID SAMPLE
For TATSUYA ISHIHARA
Aged 7 years
Distilled 2011
Bottled 2018
Cask type Sherry Hogshead 250ℓ
500ml 59.7%

【ブラインドテイスティング】
地域:スペイサイド
蒸留所:グレンロセス
年数:12年程度
樽:シーズニングシェリーホグス
度数:53〜55%程度
仕様:ボトラーズ、シングルカスク

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封後1ヶ月程度
場所:自宅&イベント飲み
暫定評価:★★★★★★(5→6)

香り:香り立ちにハイトーンな強さはあるが、合わせてリッチなシェリー香、ドライプルーン、キャラメリゼやビターチョコレート、シナモンを思わせるスパイスのアクセント。焼き栗やウッディーなニュアンスを伴う。

味:濃厚でパワフル、とろりとしたシーズニングシェリー感。ドライプルーンやイチヂクの甘露煮のような甘み、一呼吸置いてスパイシーでハイトーンなアタックが口内を刺激する。余韻はスパイシーで、樽由来のタンニンを伴い長く続く。

シーズニング系のシェリー感が濃くでており、小さめの樽にシェリーが残った(染み込んだ)状態で原酒を詰めたと感じる構成。シグナトリーのイビスコシェリーマチュアードシリーズを連想した。樽の裏にある若さがピリピリと刺激し、若干酒質と樽の乖離を感じるが、少量加水するとバランスが取れ、ぐっと飲みやすくなる。


当ブログではおなじみ、ウイスキーの写真展開催に向けてクラウドファンディングに挑戦中の、T.Ishiharaさん所有カスクサンプル。
新婚旅行でアラン蒸留所を訪問し、その場でニューメイクの詰まった1樽を購入してしまったというエピソードは中々に豪快ですが、蒸留所から毎年自分の樽の中身を状態確認で取り寄せることができるため、ミニ樽ではない実際の環境でのウイスキーの成長を見ていける点は、愛好家にとってプライスレスな経験だと思います。


ご参考:T.Ishiharaさんのアラン蒸留所 プライベートカスクサンプル飲み比べ
http://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1067805308.html


自分は昨年、5年熟成と6年熟成のサンプルをテイスティングさせて貰い、1年間の変化に驚かされたところ(上記参照)。そして1年経った7年熟成のサンプルは、思わぬ場所でテイスティングの機会がやってきました。
それは8月下旬、ウイスキーガロア誌のテイスターである倉島さんが企画した、ブラインドテイスティングイベントにて。一連のテイスティングを終えた後の延長戦に、このアランのサンプルが仕込まれていたのです。

当日はまさかこれと思わず、結果は上記の通り。
言い訳すると、アランのようなプレーンな酒質が濃厚シェリーでマスクされると、それだけで蒸留所の判定は困難。香味から連想する構成は近年系ですが、最近シングルカスクでこんな濃厚短熟リリースあったかなぁと、最後の絞り込みで悩んで悩んで・・・。そりゃ思い当たらないわけですよ、リリースされてないんですから(笑)。
悔しいのでIshiharaさんに「サンプル貸して」とお願いし、自宅テイスティングで深掘りすることにしました。

(アラン・カスクサンプル。左側が6年、右側が7年。7年の方が熟成期間の分色に深みが出ているというか、若干赤みがかってきたように見える。香味も7年の方が当然濃厚。)

改めて飲むと、単体ではハイランド系のプレーンな酒質に、濃厚なシーズニングシェリー感が上乗せされているモルトという印象。短熟濃厚シェリーはカヴァランがありますが、カヴァランほど酒質が軽くないので、荒さが若干の分離感として余韻にかけて残ってる感じですね。
とは言え既に一定の完成度はあり、いよいよボトリング時期に入ったとも感じます。

ただ樽感はピークを迎えつつあるのですが、酒質は若さからまだ伸び代があるように感じます。
それこそ10年熟成すれば、酒質部分の荒さはそれなりに落ち着くと思うのですが、ピークを迎えている樽感は益々濃く、余韻のウッディーさは過熟仕様になっていく。このミスマッチをどうするかが、今後ボトリングを決める難しさだと思います。 

比較すると6年よりは明らかに7年のほうが全体の完成度が高く、6年目でボトリングを決断しなかったのは正解だったと言えます。
今後はオーナーの好みの整理でもありますが、飲んだ際にまず最初に感じるのは樽感なので、割り切るなら8年目あたりで樽感ピークの仕上がりを重視するのも一案。あるいは、この感じなら保存期限の10年間熟成してみて、樽感次第でカスクストレングスか、加水で仕上げるという選択肢もあります。

ちなみに今回、加水は43%、46%、50%、55%程度といくつか試しましたが、現時点では50%程度が安定しているようでした。
しかしせっかくのプライベートカスクはカスクストレングスで仕上げたい。。。ギャンブル要素が残るため悩ましいですね。まあ色の濃いほうがインパクトはあるので、預かり期間丸々いってしまっても良いかもしれません。
何れにせよウイスキーの変化を学びながら、その将来の姿を考え、悩み、時間を過ごす。これぞオーナーの特権。なんて贅沢な時間でしょうか。

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(アラン蒸留所外観。ウェアハウスを含むこのアングルの写真は珍しい。。。Photo by T.Ishihara)

なお、冒頭触れたT.Ishiharaさんの写真展に関するクラウドファンディングは、開始即日に目標額を達成しただけでなく、先日は目標額の2倍となる支援も達成しました。 

ご参照:ウイスキー写真作品企画展 "Why dou you like whisk(e)y"

会場は西荻窪のNishiogi Placeに決まり、更なるコラボレーションや日程の延長まで動かれるなど、当初予想したとおり大きな話になりつつあります。 
今回テイスティングしたアランのカスクサンプルも、会場でテイスティングできるウイスキーに予定しているとのこと。原酒とともに企画がどこまで成長するか楽しみです。