カテゴリ:
BENROMACH
20th Anniversary Bottling
Aged 19 years
Distilled 1998
Bottled 2018
Cask type 1st fill Sherry & Bourbon
700ml 56.2%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1ヶ月程度
場所:持ち寄り会&サンプル
暫定評価:★★★★★(5ー  )

香り:ツンとしてドライ、ニスを塗った木材、干草、発酵系の酸味と奥には土っぽいピート香。時間を置くと酸味が強く、合わせて焦げたキャラメル、個性的な主張がある。

味:ねっとりとした樽由来の質感の奥から、ヒリヒリとした刺激。蜂蜜、クラッカー、くるみを思わせるほろ苦いナッティーさ。口の中で転がすと麦感、あんず飴のような甘みも辛うじて感じられる。
余韻はドライでウッディなえぐみが強く、微かにピーティー。ハッカやミントタブレットのようなハイトーンな刺激を伴いつつ、同時にべたつくような樽由来の質感が残る。

チグハグな印象さえ感じるほど、樽由来の嫌な部分が変に強く、余韻にかけてえぐみが蓄積する。また酒質も刺激だけが強く、ストレートは良い部分を拾いづらい。1:1程度に加水すると、樽香が整い品の良い甘みと共に麦感も出てまとまりが良くなるが、余韻はドライなままである。今後の変化に期待したいが。。。


1998年にGM社の傘下で再稼働した、新生ベンロマック蒸留所の再稼働20周年記念ボトル。ベンロマックは1898年創業、1953年にDCL傘下となった後、ウイスキー不況に伴う生産調整で、数々の蒸留所と共に閉鎖されていました。
その後1993年にGM社が蒸留所を買収。海外サイトの情報では、公式に再稼働したのはそれから6年後の1998年10月15日。買収から数年は設備のリニューアルを行なっていたようです。

記念すべき20年の節目を祝うリリースは、再稼働から約2ヶ月間の間に作られた原酒で構成されているようです。(あるいは、再開を公式にアナウンスする前に試験蒸留も行なっているのでしょうから、その際の原酒も使われているのでしょうか。)
リリースをPRする蒸留所マネージャーの言葉は「ベンロマックのクラシックなスタイルを象徴するような1本」であり、価格的にも非常に気合が入っています。
また、近年のベンロマックのオフィシャルは出来が良くなったという評価も聞くところ、この記念ボトルもさぞかし・・・と期待するも、予想外のクオリティに衝撃を受ける事になるのです。

正直、言葉にならない。思わず首を傾げ、心の中にはしかしふつふつと沸き起こる感情がある。現代的に言えば「マジ卍」。
要因は2つあり、一つは樽感。なんというかシェリーともバーボンとも言えない、リチャーしてエキスが濃く出たものを混ぜ合わせたような強い味わいで、酸味、渋み、えぐみが香味を構成していること。
そしてもう一つが酒質。樽を含めた熟成環境にも由来するのか、非常にスパイシーでハイトーンなアタック。新設蒸留所の稼働当初は酒質を安定させる事が課題にあるわけですが、その苦労を香味から感じるような・・・。ブラインドで飲んだら、まさにそうした苦労に直面した、某国内蒸留所の名前を挙げてしまうかもしれません。

今回のボトルの持ち主は、ブログ・ドリンカーズラウンジのYakuさん。
彼が「着・即・開」で大いなる期待と共にテイスティングした瞬間の反応と言ったら。。。なんというか、何かのCMで聞いたことのあるメロディーが脳裏をよぎるようでした。
このボトルを陥れるつもりなどないのですが、何故このリリースなのか、このバッティングなのか、純粋に興味深いです。

(美しく整備された再稼働後のベンロマック。ライトピートで古典的なスペイサイドモルトをハウススタイルに掲げている。Photo by T.Ishihara)

なお、今回のリリースが発売されたのは2018年4月(ボトリングは2月ごろ)、再稼働が1998年10月で、タイトルの通り19年熟成なんですよね。
20周年ボトリングで再稼働の年の原酒を使うのは良いとして、満20年を待てなかったのは、リリースにかかるタイムロスで2018年内に発売出来ない可能性か、細けえことは気にするなという思い切りか。
あるいは該当する原酒の熟成感を危惧して、なるべく早くリリースしたかった結果か。。。クラフトほど原酒が限られてるわけじゃないので、前者とは思いますが、このクオリティだと色々考えてしまいます。