カテゴリ:
THE NIKKA
NIKKA WHISKY
Aged 40 years
Premium Blended Whisky
Release 2014
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:萌木の村
時期:不明
評価:★★★★★★★★★(9)

香り:強く膨らみのある熟成香、注いだ瞬間から周囲に広がる。キャラメル、熟したバナナの甘み、ドライアプリコット、香木香を伴う落ち着いたウッディネス。深みがあり、時間経過でヴェールが解けるように多層的なアロマが広がる。

味:とろりとしたコクのある甘酸っぱい口当たり。熟したグレープフルーツやオレンジママレードに、レーズンを思わせるアクセント。角の取れたピート、香り同様に強い熟成感と多層的なフレーバーが広がる。
余韻はトロピカルな果実味、ナッツの香ばしさ。鼻腔に届く香木香、やや過熟気味なウッディーさもあるが素晴らしく長い余韻。

スケールの大きな素晴らしいブレンデッド、まさに渾身の作。加水すると甘栗や熟したパイナップルを思わせる香味、余韻の微かなネガが消え、フルーティーでリッチな樽香がさらに広がる。
積み重なった歴史と、培われた技術を飲む感覚を味わえるウイスキー。


2014年、創業80年を迎えたニッカウイスキーがリリースした、同社最長熟の渾身のブレンデッドウイスキー。同年は竹鶴政孝の生誕120周年にもあたり、新しいオフィシャルブランドとなるザ・ニッカ12年とともに700本限定での発売でした。
構成原酒には、現存する最古の原酒という1945年蒸留の余市モルトと、1969年蒸留の宮城峡モルトなどが使われており、最も新しい原酒で1974年というジャパニーズでは非常に珍しい長熟のウイスキー。700本という本数から、残っている原酒を少量ずつ組み合わせて作られていることも伺えます。

ボトルの仕様などの外観情報は割愛させて頂くとして、中身の話をメインに紹介していきます。
ザ・ニッカシリーズはブレンド比率としてモルトをグレーンより多めにブレンドする、香味の強いクラシックなスタイルです。
そうした熟成感のある多彩な香味の中でも、ニッカウイスキーとして特徴的なのがミズナラを思わせる香木系の香味。それもかなり長熟なそれ。構成原酒について、公式にはリメード樽とシェリー樽という情報がありますが、その香味にはミズナラ樽熟成のウイスキーに見られる特徴が感じられるのです。

ニッカウイスキーと言えば"新樽"が代名詞の一つのようになっていますが、1980年頃まではミズナラ樽も使っていたという話があります。
ウイスキーの樽に使われる樽材の中で、元々日本の国内で自生していたのはミズナラ。その価値に気づかずほとんどタダ同然で海外に輸出していたという話もあるくらいですから、戦後の時期に海外から樽を引くよりも入手しやすかったのではないかと考えられ、当時の原酒が今回のブレンドを構成する1ピースであってもおかしくはありません。

ザ・ニッカ40年は発売当初から1年に1度くらいは飲む機会があったのですが、イベントの最中だったり、仲間内での回し飲みだったりで、落ち着いてテイスティング出来ずにいました。
その時のイメージで一番印象に残っていたのが、この香木系の香味。それ故、なんだかニッカらしからぬブレンドだなという印象が強くあったワケです。
しかしこの度、萌木の村にて再度テイスティングの機会を頂いたところ。余市、宮城峡の長期熟成原酒にあるどっしりとしたピートやナッティーな香ばしさ、あるいは熟した果実を思わせるフルーティーさがブレンドの軸を構成しており、"らしさ"を感じると共に、ミズナラの香味がブレンドのアクセントとなっている。
上述の香木香は自分の知らない時代の一つなんだなと、認識を改めるに至りました。

また、特筆して素晴らしいのがこれだけの長期熟成原酒で仕上げていながら、過熟を思わせるウッディネス、タンニン、ドライさを抑え、複雑さと一体感のある味わいを作り上げたブレンド技術です。
スワリングすると、そして舌の上に乗せると、ほどけていく何層もの香味のヴェール。
創業者の想いとニッカウイスキーの歴史が詰まった集大成は過言ではない、素晴らしいブレンデッドウイスキー。
願わくば今後もこの技術の元に、素晴らしいリリースがあることを期待しています。