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GLENMORANGIE
SPIOS
Private Edition No,9
Release 2018
700ml 46%

グラス:グレンケアン
場所:BAR飲み@エクリプスファースト
時期:開封後1ヶ月未満
暫定評価:★★★★★(5)

香り:クリーンな香り立ち。淡い植物感、ハーブ、乾いた麦芽とバニラシロップ、微かに溶剤っぽさ。あまり香りは強くなく、穏やか。

味:繊細でソフト。少し溶剤的な刺激から、乾いた麦芽、バニラ、じわじわとビターなウッディネス。
余韻はほろ苦くスパイシーで短い。微かに青みがかったニュアンスも感じる。

まるでカナディアンウイスキーを飲んでいるかのような、主張が穏やかで繊細なウイスキー。だが決してボディがないわけではなく、不思議な香味の存在感がある。加水するとさらにマイルドになる一方、か細い主張が失われ没個性的に。


グレンモーレンジから毎年リリースされている限定販売のプライベートエディション。このシリーズは、同蒸留所のスタイルからすると、バーボン樽で仕上げる本流のハウススタイルより、フィニッシュ等での意欲的なリリースが行われる事が多く。例えば昨年はマディラワインカスクでフィニッシュした、バカルタがリリースされています。

そして今年のリリースであるSPIOS(スピオス)は、スパイシーで可憐なライウイスキーにインスピレーションを受け、開発されたもの。
スピオスはゲール語でスパイスを意味する単語であり、ライウイスキーを熟成した樽でニューメイクから一気通貫熟成させることにより、グレンモーレンジのスタイルにフルボディでスパイシーな香味が加わったとされています。

(グレンモーレンジの熟成庫内部。熟成の際にバーボン樽を中心としている蒸留所だけに、多くのバーボン樽が見られる。 Photo by T.Ishihara)

今年2月、日本で発表されたニュースリリースでは、スピオスは「ライウイスキーが最も愛された20世紀初頭の樽」で熟成されている事が書かれています。
歴史的背景から、20世紀初頭をライウイスキーが人気を博した禁酒法施行前までと考えても、それは約100年前。その当時から使われ続けているライウイスキーカスクが、想定されるリリース規模に必要となる百樽単位で確保できるのか・・・と、素朴な疑問を感じました。
(樽そのものの寿命は50年とも100年とも言われているので、モノがあるなら使えないことはないんでしょうけれど。)

海外サイトをいくつか調べてみると、使われている樽はアメリカンホワイトオークのファーストフィル ライウイスキーカスクであること。そしてライ95%のマッシュビルであるライウイスキーを6年間熟成したモノであることが書かれており、20世紀初頭という話との整合性は取れませんでした。
これはどちらが正しいのか。何度も使った樽ではアメリカの酒税法上ライウイスキーは名乗れないので、使い古した樽で最後に。。。というのも無いでしょうし。

なお、出来上がったウイスキーの味わいは、同様の熟成期間とされる従来のグレンモーレンジ10年の華やかなオークフレーバーとは全く異なるもの。まして従来のライウイスキーにある香味とも違う。穏やかでありながらスパイシーで、フルボディとは言えませんが柔らかいボディ感がある。
ちなみに、「20世紀初頭のフルボディなライウイスキーを思わせる」というコメントが、海外メディアで紹介されていましたが、そうした方向性をイメージして作られているならば、このモーレンジっぽくない感じもわかるかなという、なんだか不思議な味わいのモルトでした。

ご参考: