グレングラッサ オクタブカスク 2010-2016 PB 54.8%
GLENGLASSAUGH
The Octarve Cask
Aged 6 years
(オクタブカスクが置かれた熟成庫(上)とその内部(下)。熟成庫の裏にはマレイ湾が見える。)
Distilled 2010.2.11
Bottled 2016.10.3
Cask type Sherry
Bottle No, 03/43
700ml 54.8%
グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封直後から1ヶ月弱程度
評価:★★★★★(5)
香り:ツンと鼻腔を刺激するアルコール感、シーズニングシェリー香、ドライプルーン、梅のような酸味、ほのかに干し草を思わせるウッディネス、淡いサルファリーさも感じる。
味:パチパチとした刺激を伴う口当たり、香り同様の淡いシェリー感、奥には癖の少ない酒質で白っぽい麦芽風味、若干のワクシーさも感じられる。
余韻はヒリヒリするアルコール感、薄めのコーヒーを思わせる苦味のアクセント、ドライでタンニンを伴い長く続く。
素直な酒質、程よく付与された樽感で若いながら普通に飲めてしまう、新生グレングラッサの可能性を感じる一本。ストレートではアタックが強いが、少量加水するとバランスが良くなる。
1986年に閉鎖(休止)された蒸留所、グレングラッサ。
元々は現エドリントングループの前身、ハイランドディスティラリー傘下で、主にフェイマスグラウスやカティサークなどのブレンデッド向けの原酒を生産する役割だったため、ブレンデッドスコッチの売れ行きが落ちたことに伴うグループ全体の生産調整の一環だったのだと思われます。
その後、同グループ所有蒸留所リストからも外され消えゆく蒸留所になりかけていたわけですが、ウイスキー復調の流れを受けて2008年にロシア等の投資家によって買収。2009年に再稼働。
その後、2013年にはベンリアックグループによって買収され、さらに2016年にはブラウンフォーマングループに買収されるという、再稼働後波乱の10年間を過ごした蒸留所でもあります。
そのグレングラッサですが、再稼働直後の熟成庫には、あまり原酒が残っていなかったという話がある一方、合計数百樽の60年代から80年代蒸留の原酒が残っていたという話もあります。
まあオフィシャルを安定的にリリースする上では数百樽という単位は残ってないに等しい整理だったのだと思いますが、こうした状況から再稼働後に当面の資金確保を目的として、限定的な長期熟成原酒のリリースを行うとともに、ニューポットを詰めた50リットルのオクタブカスクの販売が向けて行われていました。
このオクタブカスクの価格は500ポンド。蒸留所での預かり期間は3年間で、樽の仕様はシェリータイプとバーボンタイプがあった模様。
日本では知られることのないマイナーな企画でしたが、ウイスキーワールド誌の取材で現地を訪れた土屋氏が日本人でのオーナー第1号となった他、同誌の掲載を受けて購入に動いた愛好家も少なくなかったようです。(一部ボトルは酒販を通じて販売もされています。)
前置きが長くなりましたが、今回のテイスティングアイテムは、まさにその当時購入されたオクタブカスクの一つからボトリングされたもの。カスクオーナーであった当ブログ読者の方から、是非飲んでくださいと提供いただき、掲載の運びとなりました。
先日、別な記事でも触れていますが、ブロガー冥利に尽きるというか、大変光栄な話です。
その味わいは、若い原酒のアタックの強さが残りつつも、スコットランドの低く安定した気温が影響してか、小さい樽でありながら樽感は意外にも程よく、バランスの良い仕上がり。特に加水で飲む分には違和感なく普通に飲めてしまいます。
また、酒質としては特筆して厚みがあるタイプではないため、若いうちは硬さ、アタックの強さを感じやすいのですが、香味は素直なハイランドタイプのベクトルにあり、通常サイズの樽で熟成された12年以上のリリースに可能性を感じる味わいでもあります。
(オクタブカスクが置かれた熟成庫(上)とその内部(下)。熟成庫の裏にはマレイ湾が見える。)
グレングラッサ蒸留所は、立地的に訪問しづらい場所にあるそうで、確かに見学の話をあまり聞かない蒸留所の一つです。
今回ボトルを頂いたカスクオーナーさんは、自身のカスクを見に行くことも兼ねて2015年に現地を訪問しており、一部上記にも掲載させて頂いた当時の写真と、訪問記もボトルと合わせ提供頂きました。
蒸留所は再稼働後にビジターセンターが整備されただけでなく、蒸留行程も一部を除いて機械化が進んでいるようです。
ただ、当時のツアーの内容は、あまり充実しているとは言い難かった模様。。。
ちなみに先に書いたように、オクタブカスクの現地での熟成期間は3年程度という設定だったところ。3年経過後、手続きなり不慣れなことが重なった結果、このボトルは倍の期間、6年間の熟成を経てしまったようです。
いやはや、このなんともいえないアバウトさがスコットランドですね(笑)。
グレングラッサのオクタブカスク販売は現在は行われていないようですが、日本の新設蒸留所では静岡蒸留所が50リットルサイズから樽売りを行なっています。
ただ、熟成環境の違いからもっと樽感は強くなる事が予想され、今回のような熟成の傾向にはならないと思われます。
通常の熟成とは異なる小規模サイズの樽での熟成がウイスキーの仕上がりにどのような影響を与えるか、勉強にもなる一本でした。
コメント
コメント一覧 (6)
この度も通常の倍期間熟成となかなか珍しいものですね、うらやましいです。
それはそうと、お聞きしたいのは香りのところの「シーズニングシェリー香」なんです。
シーズニングシェリーは市場には出回らないものと聞いておりますが、風味の傾向がつかめる程の数を試せるところがあるんですか?
以前から機会があれば一度利いてみたいと思っていたのですが、地方在住なものでかないません。東京に出向く際にでも寄ってみたいと思いますので、差し支えなければ教えていたたけませんでしょうか。
コメントありがとうございます。
今回は非常に運が良く、こうしてご好意により珍しいボトルを飲ませていただきました。
冗長ではありますが、ただただ感謝するばかりです。
さて、ご質問頂いたシーズニングシェリー香ですが、おっしゃるように本来シーズニングシェリーはシェリーブランデーなどの蒸留酒やビネガーに使われたりするので、市場に出回ることはないと聞いています。
自分はどうしたかというと、五反田にあるシェリーミュージアムのマスターにお願いして、現地ボデガから実際にシーズニングシェリー樽に入っていたシーズニング液を貰ってきてもらいました。
一般的な商品ではないため、今もなお飲めるかどうかはわかりませんが、同店ではFBのイベント募集にて、シェリー樽の勉強会を開催したりしておりますので、ひょっとするとそうした機会に類似のものが提供されるかもしれません。
ただ、一つ言えばシーズニングシェリーは色々タイプがあるものの、自分が飲ませて貰ったオロロソは、コクがなく酸味がちょっと強いオロロソという感じでした。
普通のシェリーとの違いはそう大きくないとも言えますので、もしどうしてもということでしたら、熟成の若い安価なオロロソあたりで代替して、イメージして頂ければとも思います。
シーズニング用シェリー風ワインとでもいうのでしょうか、飲まれたものは色とかどんな風でした?
シェリー風ワインという理解で問題ないと思います。
実際のオロロソシェリーは何十年という熟成を経てより上質なコクと風味を纏っていくもので、その過程で対を成して育っていくのが本来のシェリー樽です。
ところが、ウイスキー用のシーズニングシェリー樽の育成は、とりあえずそれらしい香味を樽材に染みこませることを目的としているため、中に入っている液体の成長は二の次です。
それ用に調整したシーズニング用シェリー酒を入れて1~4年間程度寝かせるだけ。これが様々なタイプがあり、ボデガによって味も変るようですが、ここに熟成したシェリー酒なんて使うわけが無いんですよね。
飲んでみると、オロロソシェリーっぽい香味はあるのですが、致命的に無いのがコクで、薄っぺらく、若いワインにそれ用に調整した蒸留酒を加えて酒精強化しただけのモノなのかなと推測しています。
色については以下の記事にその実物の写真をUPしていますので、ご参照ください。
http://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1055884968.html
結局製品化していないからシェリーかどうかはあやふやで、それをシェリー樽と呼ぶかも、グレーゾーンなんでしょうね。
なんとも複雑な気持ちですが、これで美味しいウイスキーができるようになるなら、後は「シェリー風味液」をひたすらウイスキー熟成用に特化して研究していって欲しいとも。
この話はいつかまとめて記事にしたいと思っています。