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PULTENEY
GORDON & MACPHAIL RESERVE
Aged 29 years
Distilled 1984
Bottled 2014
Cask type Refill Bourbon Barrel #10171
Exclusively Bottled for JIS
700ml 57.6%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅持ち寄り会
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(7) (!)

香り:穏やかで熟成を感じる香り立ち。ほのかに溶剤的な要素を伴うバーボンオーク。麦芽やバニラの甘み、レモンピール、微かにハーブを思わせる爽やかさも。

味:コクのあるクリーミーな口当たり。刺激を伴う麦芽風味、バニラや洋梨の品の良い甘み。序盤はプルトニーらしいトーンの高いキャラクターから、余韻でドライパイナップル、黄色系のトロピカルフルーツ、オーク由来の華やかさが一気に開く。

香味ともプルトニーらしさがありながら、長期熟成故の熟成感、樽由来の要素も備わっている。プルトニーにおける熟成のピークのひとつ。酒質と樽が自然なバランスを保っている、実にうまいウイスキー。 
私事ですが、1984年生まれの自分にとって「生まれ年のスコッチモルト」で、これというボトルに出会えないのがスコッチ業界のあまり嬉しくない事情の一つ。1984年に限らず、同世代である方々は同じ問題を抱えているわけですが、これはスコッチ業界の冬というより暗黒時代が背景にあります。

当時、消費量の落ち込みから多くの蒸留所が生産を縮小、そのいくつかは閉鎖、操業停止に追い込まれている話は言うまでも無く。製造行程においては麦の品種改良からか何らかの原因で原酒にコク、深みが無くなっていった点に加え、樽の使い方が安定せず、代表的な事例としてシェリー業界の動向から1960、70年代は手に入りやすかったシェリー酒の古樽が入手困難となり、熟成の浅い青臭い木香が漂うシェリー樽や、シェリー酒を直接混ぜたような質の悪い樽によるウイスキーも見られるなど、単に蒸留所が閉鎖されただけではない、ウイスキー全体として質、量ともに落ちた時代でした。

もちろんその中でもすべてが悪かったわけではなく、素晴らしいと思えるボトルに出会えることもあります。
特にあまりファーストフィルシェリー樽に頼っていなかったと考えられる蒸留所は、バーボン樽やリフィル樽へのシフトがスムーズで、大きな落差がないように感じます。
それが中々1984年ではなかったというだけですが、今回のプルトニーは樽感と酒質の熟成によるバランスが素晴らしく、ウイスキーとしての高い完成度を感じられるものでした。


プルトニーは加水されてしまうとらしさが大きく軽減されて、46%であっても去勢されたような印象を受けることがあります。
かつてGMがリリースしていた長期熟成の蒸留所ラベルはもとより、オフィシャルでは21年はなんとか、しかし30年、35年は美味しいけれどプルトニーじゃなくても良いだろうというくらい樽感が主体的で、加水は20年くらいまでだなあというのが個人的な印象です。

それが今回のボトルは高度数のカスクストレングスゆえボディに力があり、樽感をしっかり受け止めて、まずは酒質由来の要素を味わった後で樽由来の華やかさが余韻で広がる。絶妙なバランスを味わえる構成に、熟成のピークとはこういうことかと感じられます。
しいて言えば、スケールという点ではさほど大きくないのが"時代"とも言えそうですが、そこは重箱の隅。自分の生まれ年で、こうしたボトルに出会えたことが嬉しい1杯でした。