カテゴリ:
imgrc0070117690

ここ最近超精力的にオリジナルボトルをリリースしている信濃屋から、バーボンバレル熟成とオロロソシェリー樽熟成のトマーティンが2種類発売されます。
どちらも2005年蒸留の10年熟成。
短熟やなー、バーボンはともかくシェリーは前にオフィシャル12年で地雷踏んでるしなぁ、と飲まずにスルーを決め込む予定でしたが、サンプルを試飲したところ、その考えは愚かだったことが良くわかりました。

トマーティンと言うと、76ビンテージを知っている方にはケミカルなフルーティーさというイメージが強いですが、近年のトマーティンは酒質がニュートラルというか、少なくともケミカルなニュアンスはなく、樽感とあまりケンカしないような印象があります。

今回のリリースに使われている2樽は近年系の構成ですが、しっかりとした樽感に、甘みやフルーティーさがあり嫌味の少ないタイプ。単体で飲んでも一定以上の評価が期待できるだけでなく、同一ビンテージ、同時発売、ほぼ同じ度数という仕様で、「樽」の違いを知る、飲み手の経験値を高める教材ボトルとしても非常に面白いと感じました。
今後のBARでの飲み比べが楽しみです。

0000000067202
TOMATIN Aged 10 Years Distilled 2005
Cask type 1st Fill Bourbon Barrel 59.0%
ハイプルーフらしいヒリヒリとしたスパイシーな刺激はあるものの、ねっとりとした樽感に、洋梨、蜂蜜レモン、ウッディーな渋みとオーキーな華やかさ。典型的なバーボンバレルのフレーバーが感じられます。
特に一口目は後半にかけて広がるというか、弾けるようなイメージ。10年の若さゆえ単調ではありますが、今回のカスクは近年のバーボンバレルの中でも「らしい」要素が感じやすいと思います。

0000000067212
TOMATIN Aged 10 Years Distilled 2005
Cask type 1st Fill Oloroso Sheery Butt 58.0%
シェリーの濃さを特濃、濃厚、普通、薄い・・・とするならこのボトルは濃厚のゾーン。
香りにオロロソそのものの酸味を思わせる、とってつけたようなニュアンスは感じられますが、味わいの酸味と甘みのバランスは良好。近年系のウッディーなシェリー感の中にイチジクの甘露煮、ほのかにクランベリー、アーモンド、ハーブ系の香味を感じる。硫黄などの嫌味の少ないリッチな味わいで、これは10年くらい置いて、ボトルの中で馴染ませても面白そうです。


今回のリリースを試飲して感じたのは、時代が完全に切り替わったのだなということ。
ほんの数年前までこの価格帯は60〜70年代蒸留の長期熟成原酒に手がとどくレンジでしたが、最近は80-90年代はおろか2000年代に突入してしまいました。
昔を懐かしむのも時には良いですが、どんなに望んでも時計の針は戻らない。
であれば昔は昔、今は今で楽しんでいくしかないのかなと。そう考えると、今回の10年ものも、2016年の他のリリースと比較して、見るべきところのあるボトルであると感じました。

バーボン、シェリーともに近年系の王道という感じですが、特にシェリーの方はウイスキー熟成用の樽の質の向上(あるいはノウハウの蓄積)が見られると感じる1本。今回のような樽がさらに 10、20年後に60年代とは異なる新しいシェリー樽の魅力につながってくれればと期待出来る内容でした。

それにしても信濃屋さん、1ヶ月に1~2本くらいのペースでPB出してませんか?
以前から活発でしたがここ最近さらに高頻度なような。いち酒屋がここまでの頻度でプライベートボトルをリリースするのはちょっと凄いことだと思います。
もう日本を代表するボトラーズブランドと言っても良い状況ですね。
今後の活躍、展開も楽しみにしています!

※画像引用:http://www.shinanoya-tokyo.jp/shopdetail/000000006721/ct29/page1/recommend/