サントリー ローヤル 1970年代流通 ダンピーボトル ウイスキー特級
ROYAL
SUNTORY WHISKY
Distilled and Vatted at Yamazaki Distillery
(No Aged)
1970's
43% 760ml
グラス:グレンケアン
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★(4-5)
香り:甲類焼酎を思わせるプレーンなアルコール感を感じる香り立ち。徐々に薄めたカラメルの甘い香りや若干の植物感、淡い木のえぐみにモルティーなニュアンスも感じられる。アルコールは立っており、ヒネもなく状態は良い部類。
味:香り同様に甲類系のアルコール感と合わせて、樽由来の華やかな香味と乾燥させた麦芽、グミのような駄菓子の甘み。飲み口はスムーズだが徐々にピリピリとしたスパイシーさ。味はしっかりあるが、奥行きはあまり無い。余韻はほろ苦く穀物感を伴う。
第一次洋酒ブームを象徴する1本であり、かつてのジャパニーズウイスキーはこうだったのだと色々な景色を見ることが出来る1本でもあります。
サントリーローヤルの発売は1960年、漢字の"酒"のつくりの部分を象った印象的なボトルデザインは、半世紀以上の時を越えて、今なお続く伝統的なデザインでもあります。
他方、その伝統の中で、亜種とも言えるダンピーデザインのボトルがありました。
通常のローヤルが720mlサイズである中で、760mlの海外仕様。それが今回のボトルです。(確かサントリーオールドも1960年代から1970年代あたりで輸出向けの760ml仕様をリリースしています。)
何かをオークションで落とした際にセットで付いてきたボトルだったと思うのですが、押入れの中にあったので整理も兼ねて開けてみました。
ラベルから読み取れる諸々の情報から、推定される流通時期は1970年代前半。
サントリーの住所が堂島浜通2丁目なので、どんなに新しくても1978年以前という事になります。
共に1973年創業である白州蒸留所も、知多工場の原酒もあったかどうかという時期にあたり、ラベルには上記のとおり「Distilled and Vatted at Yamazaki Distillery」と書かれ、山崎が強調される仕様となっています。輸入バルク原酒を除けば、モルト原酒は山崎オンリーといっても間違いないかもしれませんね。
サントリーローヤルで1970年代前後といえば、泣く子も黙る高級品です。
自分のような平民がおいそれと飲めるような酒ではなく、主に富裕層や高級ギフト向けの商品だったわけで、さぞかし長期熟成させた山崎原酒が潤沢に使われているのだろうと思うところですが・・・。この頃のジャパニーズブレンデッドは、モルト原酒の香味をブレンド用アルコールで割って薄める造りをしており、奥行きに欠けるモノが多いだけでなく、その造りが結果的に長期間の保管に耐えないウイスキーを生み出す形になっていました。
当時のジャパニーズブレンデッドウイスキーを飲んで大多数に感じるのが、べったりとした、甲類焼酎のようなアルコール臭と舌触りです。
このローヤルも同様に、グラスに注いですぐ感じるのは芋っぽいアルコール感。長期間の保管の中で、モルトの香味がこなれていくのに対し、使われたブレンドアルコールの香味だけが残っているのではないかと推察します。
ただ味はウイスキーらしいカラメルや樽由来の甘みがあって穀物感も余韻で多少感じられ、時間経過で香りでもうっすらそうしたニュアンスが拾えて来ます。ストレートやハイボールで飲むには物足りないですが、ロックにするとコクのある甘みにほろ苦さ、モルティーなニュアンスがあり、飲める酒ではありました。
写真は前回紹介した、1980年代に流通した60表記ラベルの最後期あたりと推察されるローヤルと今回のローヤルのラベルです。
表記が微妙に異なるのはもちろん、グレーンや原酒の種類が確保され、ブレンドのノウハウも現在のサントリーに通じるモノが確立し始めたのでしょう。モルティーさに加え、ブレンドそのものの安定感は明らかに1980年代のほうが向上しています。
ただ、この1980年代のローヤルを1970年代以前に出しても受け入れられたかどうかはわかりません。人の鼻と舌もまた時代によって変わってきているのです。当時がストレートではなくロックや水割り的な飲み方をされる前提で作ったとすれば、こういうつくりもあるのかなと感じます。
スコッチウイスキーとは異なり、黎明期から発展期にあたるのがジャパニーズの1960年代から1980年代。全盛期たる1990年代から2000年代のジャパニーズへと通じる当時の味わい、時代の変化を感じながら、飲み比べて見るのも面白いかもしれません。
コメント
コメント一覧 (7)
昔の珍品もまだまだ隠れているんですね。
私がローヤルを初めて味わったのはもう40年昔で(高校生で・・違法ですな)。
寿屋60周年記念(私は前年の産)のこちらも自身が還暦を迎えられそうで。
サントリーがブランドを大事にしてくれるのはうれしいことです。
かつてサントリーとニッカは横並びで銘柄を揃えてました。
70年代半ばなら500円がサントリーレッド・ハイニッカ、1000円がサントリーホワイト・ブラックニッカ、1800円がサントリー角瓶・ニッカ特級ノースランド、2200円がサントリーオールド・ニッカG&G、3000円がサントリーリザーブ・スーパーニッカ、5000円がサントリーローヤル・ニッカキングスランド、8000円がサントリーエクセレンス・ニッカスペシャルエイジ、15000円がサントリーインペリアル・ニッカ鶴、といった具合でしたね。
サントリーのほうが健在の銘柄が多いですなあ。
久しぶりに(30年ぶりくらい?)ローヤルを飲んでみたいような。
その後よく思い出してみると伯父さん(教頭先生なのに酒乱ぎみ)に高校時代飲ましてもらったしミニチュアを開けちゃってるはずなんですよ。
私の父親も教員ですが小学生の私にビールや日本酒を飲ませたがりました・・くりりんさんのお父上はそんなことはないでしょうが。
そういえば、先日コメントでふれた有楽町の「酒蔵」、閉鎖された時くりりんさんはまだ小学生なんですねえ・・やっぱりご存知ありませんか?
えーっと年齢等については記憶違いということで、理解いたします(笑)
言われてみると、ニッカとサントリーで銘柄を比較した際、ニッカは途中でアサヒに変わった影響もあるのかもしれませんが、昔からある銘柄というのは少なくなってしまいましたね。
ただ両者とも原酒構成という点では昔と同じ質や構成を維持し続けている銘柄というのは皆無でしょうから、良い変化をしていても悪い変化をしていても、同じモノは無い。名前だけ残っているに過ぎないといっても過言ではないかもしれません。
それこそ今回の記事で触れたローヤルも、1980年代流通のモノは非常にモルティーで樽感の効いた味わいがありますが、現行品はすっかりグレーンが強くなって・・・。
ウチの父親は自分本位な人でしたから、こちらに薦めることも、ましてウイスキーの類などは一切なかったです。海老沢さんのお父様はそうして気さくな面があったのでしょうね。
20を過ぎてからは一緒に酒を飲む機会もありましたが、こちらの好みはお構いなしで自分の流れでしか飲まない人でした(笑)。
有楽町の酒蔵ですか?
当時自分は神戸のほうに居ましたし、東京に戻ってきたのは大学に入ってからですから、聞いたこともないですね。申し訳ありません。
このところどーでもいいような個人的おもいでのコメントですいませんです。
でもバブルの象徴「酒蔵」は見せたかったなあ・・
いえいえ、こちらこそレスが遅くなりまして申し訳ありません。
如何せん仕事と疲れがたまると、休日は特に死んでいることも少なくないので。(笑)
海老沢さんからお聞きして、気になって、この酒蔵を検索しているのですが、なにぶん昔の話なのでそれらしい写真が出てきませんね・・・。
6月2日のジョニーウォーカーブラックラベルの記事のコメントで「酒蔵」にふれる前に、
私もネット検索してみたんですよ。
なにぶん四半世紀も前の記憶なんで、なにか記録がないかなと。
すると当時新入社員として「酒蔵」の立ち上げに参加し、ゴードン&マクファイルなどに買い付けに行くなど働いていたが「酒蔵」が閉鎖された翌年に西武を退社した・・とゆうブログがあって。
東洋最大の酒売り場の存在は私の妄想ではなかったと安心して投稿したわけです。
もっとも現場の写真は見つかりませんでしたが。
当時当たり前だったラインナップは今では垂涎のものがほとんどですから、その光景は見れないことが逆に良かったのかもしれません(笑)
日本は世界で一番多くの酒が飲める国だと思っています。
今でも街角の酒販店には様々なお酒が並び、BARもまた海外とは1軒1軒が平均して高いレベルにある。
海老沢さんの言う四半世紀前の時代からの積み上げがあるからこそ、今のこの日本の酒文化のレベルの高さがあるんだなと感じています。