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先週末、5月14日、15日はTokyo International Bar Show Whisky Expo Japan 2016(通称、バーショー)が後楽園で開催されていました。
ウイスキーマガジンライブ時代は参加していたものの、バーショーになってからは特段惹かれるものもないなと不参加続きで、実に3年ぶりの参加となります。


結論から言うと、思っていた以上に楽しめました。エンターテイメント的な催しもあり、ウイスキーの試飲もニューリリースやカスクサンプルだけでなく、コアな飲み手が楽しめる工夫も随所にあってなかなか良かったなーと。
ひと昔前の、ボトラーズ含め長期熟成リリースの旨いボトルを飲みに行くというより、ウイスキーの体験、勉強をしに行くという内容。その点では悪くないイベントだったと思います。

せっかくなので印象に残ったブースとその内容を。まずは今回最も充実していた(長く滞在した)、ウイスク・イーさんのブース(ソサイエティ、ベンリアック、グレンドロナック、グレングラッサなど)から。

此方はベンリアック系列のコーナー。
試飲としては、6月に正規品がリリースされるベンリアックカスクストレングスや、グレンドロナック1995、その他リリース品の紹介に加え、各蒸留所のニューポットが飲めました。
また、テーブルの奥には夏頃にリリースする予定だという、グレンドロナック1993-2015のサンプルが・・・(これがキャラメルナッツを思わせる甘みとほろ苦さで旨いのです。)

ベンリアックのカスクストレングス バッチ1 (No age 57.9%)は、ブースで聞いた話ではシェリー樽やバーボン樽、そしてフィニッシュ(?)に新樽も使って仕上げたという、シングルカスクではなくバッティングのシングルモルトです。
体感熟成年数は10〜15年程度、ウッディーなエッジ、スパイシーな口当たりではあるものの、単純にオーキーなだけではない、単一樽では出ない多層感があります。麦芽、バニラ、オーク、ほのかにオレンジジャムのような酸味、美味しいモルトに仕上がっています。
正規品の価格は実売税抜き8000円程度を予定しているそうで、4月頃に入った並行品よりもお手頃価格。これは普通に良いリリースだと思います。


先に書いたように、このブースでは普段機会のない、ニューポットのテイスティングができました。
決して旨いとは言い切れないニューポットを飲む意味は、まずひとつはハウススタイルの要素を確認できることにあると思います。
熟成するとどうしても樽が出てしまい、酒質由来の部分が分かりづらい場合があります。ニューポットや若いウイスキーも飲んで、点と点を結んで線を引くように、自分の中で統計立てて蒸留所の特性を理解していくしかありません。

また、ワインの新酒評価のように、その時期の原酒の特性を知っておくのも、5年後、10年後に生きてきます。
例えばこのニューポットならこのタイプの樽で、これくらい熟成させれば美味しくなりそうだとか、あるいは酒質が軽いから、〜〜年以上は熟成に耐えられないだろうなとか、さらに踏み込んだ評価ができるわけです。

今回飲めたニューポット3種は、それぞれに特徴があって非常に面白かったです。
ベンリアックはノンピートタイプで素直な優等生。麦芽とコクのある風味が主体で、クセの少ない綺麗な酒質を感じます。
ただ素性の良さゆえ、20年を超えるような熟成では削ぎ落とされるものがなくなってしまい、ボトラーズなどにある樽の味しかしないモルトになりかねない原酒とも言えます。バーボンホグスあたりで10〜15年くらいで仕上げるのが丁度良さそうだなと感じました。 

グレンドロナックはベンリアックよりも麦芽系のフレーバーが強く、パンのような香味に、少し酸味、少々野暮ったさに通じる要素も。
グレングラッサは青みがかったフレーバーがいかにもという感じ。汗や乳酸系を思わせる酸味、荒い麦感。植物っぽさが潜んでおり、今は種の状態で芽吹きを待っているようにも感じます。


ドロナックはシェリー系の仕上がりを目指すと考えると、これくらい適度なクセのがあったほうが良いんじゃないかと思うのです。
グラッサは結構しっかりクセがあり、その仕上がりから「草っぽい」などを様々な評判があるわけで、この原酒もまたその傾向に進む種を持っている気がします。

お次はすぐ隣のソサイエティコーナー。
試飲の量と質では今回のバーショーでダントツだったと思います。
机の左側半分は全て無料で、入会してなくてもテイスティング可能。ソサイエティをかなり積極的にPRしてましたね。

個人的に一番ヒットだったのが無料試飲で飲めた4.208、ハイランドパークの23年。
オイリーでリンゴのコンポートのようなフルーティーさ、そして余韻にかけてハイランドパークらしいほろ苦いピートフレーバーが開く。これこれ、こういうのが良いんですよ。発売後、結構な期間売れ残っていたようで、1本欲しかったです。
その他にもアランやオルトモアが良い味してました。また、有料の方では余市の20年、グレンゴインのスパニッシュオーク系どシェリーなんてのもあり、これらも当然美味しい。
昨年親元が変わってどうなるかと思ったソサイエティですが、このボトラーズ受難の時代に安定したクオリティで、流石の底力だなと思います。

余談。
グレンドロナックは15年に引き続き、18年がそろそろ終売なのではないかという予想がされています。
ブースで聞いた話では、今後今年の割り当てが正規品として入荷するそうですが、その後は未定とのこと。当面大丈夫なのかもしれませんが、引き続きチェックしていきたいと思います。

次回に続く。