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最近ブログ読者の方々から、テイスティングについて質問を受けることが度々あります。
自分のような素人がそのような質問を頂くことは光栄であり、しかしながら自分よりセンスと精度のあるテイスティングをする方は大勢いるという現実に、複雑な気持ちを抱えています。
まあせっかく質問を頂いたわけですし、お茶を濁した回答も申し訳ないところで、「テイスティングに関する話」を不定期にまとめていきたいと思います。
とりあえず今回はつれつれととりとめないままに。


「ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ。」
知っている人も多い、"ラーメン発見伝"という漫画の最初期に登場する、衝撃的なセリフです。
確か掲載されたのは10年以上前。当時自分の実家は現役の中華料理屋だったので、このセリフはいろんな意味で響くものがあって、こうしてウイスキーについてレビューを書くようになった今もまた、時折思い起こす言葉でもあります。
 
んなもん知らないよ。という人向けに一応セリフの前後をまとめると、
主人公一向がある有名ラーメン店で人気のラーメンを食べます。
そのラーメンはこだわりぬいた食材を使った逸品と言う売り出しで、大半の常連客や雑誌のレビューなども、材料由来とされる風味を絶賛していました。
ところがそのラーメンは、濃い味付けが原因でそんな風味をまったく感じないシロモノであり、主人公はその点を店主に指摘します。
いくつかのやり取りがあった後、店主から上述のセリフが出てくるわけです。
 うーん、この悪どい顔…(´Д` )

ここでいう「ヤツら」とは、原料由来の味が消し飛んだラーメンから、その味がすると絶賛する客のことです。それは情報を食べて満足しているにすぎないと。
正直これは痛い程に事実であり、我々が味覚嗅覚等5感6味からくる情報を脳で処理している関係上、多かれ少なかれ様々な情報が影響し合うことは避けられません。
「テイスティングは脳でする」、「味わいの認知科学」等様々な書籍でも触れられていますが、味わうという行為と脳の働きは、切っても切れない関係にあるワケです。


さて、この言葉をウイスキーに当てはめて考えてみると、各メーカーのリリースからは、そうした商品の位置づけが見えてきます。
例えばドラマですっかり有名になった、ニッカウヰスキーのスーパーニッカ。
ジャパニーズウイスキーの父、竹鶴政孝が波瀾万丈の人生の中で、持てる技術と原酒、そして亡き妻への想いを込めて、ボトルにまでこだわりぬいて作った渾身のウイスキー。
というドラマチックな背景があるのですが、現行品は原酒構成もボトルも別物で、ことその風味に関して直接的な関係はほとんどないと言えます。

もう一つ例を出すと、ブルイックラディのオクトモア。
ファーストリリース時点から100ppm以上のピートを炊きこんだ、史上最強のピーテッドモルトシリーズ。昨年リリースされたオクトモア06.3アイラバーレイは、ピートレベルは258ppm(アードベッグの約5倍)に加え、原料にはアイラ島のオクトモアフィールドで栽培された麦芽のみを使用。5年間アイラ島の潮風と肥沃な土の香りの中で熟成させた、オールアイラ産のヘビーピーテッドモルトであることを売りにしています。
ピーティーさを極めることは無駄とは言いませんが、これではただでさえ蒸留によって消えやすい麦芽の特徴などないも同然です。聞くところによると人間が感知できるピートの上限を超えているという話もあります。
 
どちらのウイスキーにもさまざまな形で情報があり、中には味わいとは実質無関係と言う事例もあるのは上記の通りです。
ウイスキーには多くのバックストーリーがあり、我々は知る知らないに関わらずそれを飲んでいるのです。


では、情報は知らない方が良いかというとそんな事はありません。
ウイスキーを楽しんで美味しく飲むきっかけになりますし、思い入れのあるものであれば、なおのこと美味しく感じることも出来ると思います。
人間が好みを形成する要素については、4要素があるという解説があり、情報もまた重要な要素の一つとされています。
"知るほどに美味い"とはよく言ったもので、つまりウイスキーを深く知ることは美味しく飲むための一歩であるわけです。

「味の好みを決める4つのおいしさとは」
 

ただしテイスティングをするうえでは、これだから美味いはずというような混同する考え方はするべきではなく、情報のみ先行してしまうことは最も注意すべき点だと感じます。
「美味しいと感じたのか」、「美味しいと思うように感じたのか」、無意識というのもは恐ろしく、知らず知らずに影響を受けているのが脳の働きと味覚の関係。この差は非常に大きいワケです。 

そうした影響を知りたいなら、誰でもで来る検証方法が、ノーヒントのブラインドテイスティングです。極端な話、自分が苦手だと思っていた銘柄を美味しいと感じたり、その逆もあったり、事前情報がないだけで認識が大きく変わる事があるくらい。
自分が率先してブラインドをする理由の一つがこれであり、オープンテイスティングでの評価軸と、ブラインドテイスティングでの評価軸にブレが生じていないかを確認するという目的もあります。

インターネットの普及で手軽に情報が手に入るようになった昨今、10年数前は欲しくても手に入らなかった情報がすぐ手に入る、情報が手に入りやすいがために知識と経験の逆転現象が起こりやすい状況になっています。
知識と経験、鶏と卵でどっちが先かという話でもありますが、この場合はどっちも先という答え。精度の高いテイスティングを目指して、知識も経験もバランス良く、頭でっかちにならないように気をつけたいものです。


追記:1/25のIANでのバーンズナイトでお会いした皆様、楽しいひと時をありがとうございました。
しかし会の最中に寒気が出てきて辛さとの戦いになり、せっかくの交流もおざなりになってしまったように思います。申し訳ありませんでした。
結局限界を感じて早めに帰宅、その後は39度後半の発熱で、ほぼイキかけました。(インフルではありませんでしたのでご安心ください。)
熱は1日で下がりましたが酒は飲めませんので、今回はこんな感じでとりとめもない話です。熱で寝てる間暇だったんですよ〜。
今後ともよろしくお願いします!