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1980年代からスコットランドで一番飲まれているウイスキーは、ジョニーでもバランタインでもなく、フェイマスグラウスだそうです。 2012年の統計ではイギリスでもトップだったとか。
フェイマスグラウスの名前の由来である、「あの有名な雷鳥のウイスキーをくれ」と注文されたことがきっかけというエピソードは1900年ごろの話。この当時はローカルで有名だったに過ぎず、フェイマスグラウスが本当の意味でフェイマスになったのは、1970年~1980年にかけて。
ハイランドディスティラリー社の傘下に入り、原酒を確保して拡販路線をとったことで、1980年代に世界で100万ケースを販売。名実共にフェイマスな雷鳥のウイスキーとなりました。
今回の一本は、その1980年代の中ごろ流通のフェイマスグラウスです。

THE FAMOUS GROUSE
FINEST SCOTCH WHISKY
1980's
43% 750ml

構成原酒:グレンロセス、タムデュー、ハイランドパーク、グレンゴインなど
評価:★★★★★★(6)

香り:ケーキシロップを思わせる甘い香り立ち、麦芽、植物系のえぐみと穀物の香ばしくも甘くライトなアロマもある。
奥からスモーキーさ、オレンジピールの爽やかさ。

味:マイルドでスムーズ、グレーンのニュアンスを感じる口当たりだが、後半から粘性があり、口の中に張り付くようにフレーバーが残る。
オレンジママレードジャム、薄めの紅茶、オールブラン、ピートとあわせて乾燥させた牧草っぽさ。余韻はビターで長く、ハイランド系のピート香がじわじわと鼻腔まで抜けてくる。

氷と混じることで柔らかいスモーキーさが感じられ、ハイボールはスムーズでメローな飲み口に適度な熟成感、麦芽、ピートなどのモルト由来の風味を感じることが出来るレベルの高い1杯。
兵庫県三ノ宮の名店、BARメインモルトの駆けつけ1杯といえば、キンキンに冷やしたフェイマスグラウスを使う氷無しのハイボール。ここは同BARをインスパイアしてオールドボトルも氷無しで楽しむのも良い。もちろんアテはハムサンドイッチを準備したい。

フェイマスグラウスといえば、キーモルトにハイランドパークとマッカランを連想する方も多いと思いますが、それは現行品に限った話で、こと1990年代以前はハイランドパークやタムデューが中心となったウイスキーです。
当時フェイマスグラウスを製造していたハイランドディスティラリー社(Highland Distillers)は1970年にフェイマスグラウスを、1996年にマッカラン蒸留所を傘下としています。
スコットランドでは会社、グループの枠にとらわれず原酒の融通もされていましたが、メインとなる(必然的に使用量が多くなる)原酒は、安定して確保出来る所有蒸留所が中心となります。まして上述のように消費量の多いブレンドであればなおのことです

今回のボトルはハイランドディスティラリー社時代であり、マッカランの影響はあまり期待出来ません。実際、味のほうではハイランドパークの影響をかなり感じます。
グレーン感もそこそこあり、一口飲んだだけではライトで締まりが無いと言う印象も持ったのですが、2口、3口と飲み進めるほどに口の中でモルティーなフレーバーが混ざり合い、ピートのニュアンスがじわじわ効いてきました。
バランス良く、後を引くブレンドであり、ファンが多いのも納得の1本です。

※補足※
フェイマスグラウスの日本国内への輸入は、1974年にハマヤ株式会社が、1970年代後半(あるいは1980年)頃から松下電器が取り扱いを行っています。
ハマヤ時代はボトル形状がそもそも異なっており、ネック部分が丸みを帯びています。
松下電器時代は、ラベルに特級表記が直接印字されているかどうか、特級表記が印字されているならその上にロゴが入っているかどうかで、おおよその時代を判別出来ます。
・1980年代初期、ラベルに特級表記が無い(紙で別張り)
・1980年代中期、ラベルに特級表記あり(ロゴ無し、今回のボトル)
・1980年代後期、ラベルに特級表記あり(ロゴ有り)
以上、ご参考まで。