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関東の夏の暑さは今週までがピークだそうです。
確かに気象庁の予報では来週からほんの少しだけ最高気温が下がっています。といっても30度以上はあるんですが。
ウイスキーが美味しい秋がやってくるのは嬉しいですが、夏が終わってしまうのはそれはそれで寂しいです。

主観ですが、大多数のウイスキーは涼しい~寒い時期のほうが美味しく飲めると思います。
蒸し暑い夏の夜はクーラー入れててもアイラやブレンドのハイボールなど、すっきり系に頼りたくなるし、あげくビールに浮気しちゃったりもして。一方で、真夏日向きとは行かないものの、冷やすよりも常温で飲んだ方が良いと感じるボトルも、あるはあります。
昨日の記事では冷やすほうが好みとしてオーヘントッシャン1965を記事にしましたが、今日はその逆になります。

KIRIN
FUJI GOTENBA
20th Anniversary
Pure malt whisky
40% 700ml

評価:★★★★★(5)

香り:煮たリンゴのように甘酸っぱく、エステリーな熟成香。バニラ、ドライなウッディネス、時間と共に牧草のようなピート香もかすかに感じられる。単調だが好ましい香味が複数ある。加水は大きな変化は無く、むしろ薄くなる傾向がある。

味:香り同様にドライでエステリー、香味はしっかりあるが口当たりは軽くスムーズ、煮たリンゴ、ライチ、ドライアプリコット。中間は単調でほのかに樽材の香味。余韻はドライで口の中の水分が喉の奥へと奪われていく。フルーティーでかすかにスモーキー。
香り同様加水はあまり変化が見られないが、ドライさは和らぐ。気になる人は少量加水すると良い。


富士御殿場蒸留所が操業したのは1973年のこと。その20年後の1993年に同蒸留所20周年を記念してリリースされたモルトウイスキー。連続式蒸留器で製造したモルトウイスキー(ニッカでいうカフェモルト)と、通常蒸留のモルト原酒とをバッティングしたピュアモルトとなっています。
"20周年記念"なんて書いてあると「限定品」のような気がしますが、当初は限定品の予定だったものの、評判が良いので定期的に生産が続いている商品で、なんだかんだで販売開始から20年を超える息の長いブランドに。今でも蒸留所及びDRINXで購入することが出来ます。

キリンDRINX
富士御殿場蒸留所20周年ピュアモルト
http://www.drinx.jp/housky/fgd20th/

香味は終売となってしまった18年に共通する点が多くあり、富士御殿場蒸留所のらしさがしっかり出ていると感じます。
一方で、フルーツ感の後が単調で、強いドライな余韻に入ってしまう。メーカーコンセプトのクリーン&エステリーはおっしゃるとおりなのですが、全体の中ではバランスが苦しいと思える部分です。この軽さは3回蒸留など蒸留回数の多い原酒に共通する傾向に似ており、使われたという連続蒸留式モルト由来だと感じます。強いドライさも同様に、ピュアなスピリッツにバーボン樽での早い熟成速度ゆえの産物と言えそうです。また、口開けだとこなれるのに少々時間がかかる印象もあります。
しかしコスパで言えば国産3000円でこの味わいは良く出来ていますし、ここまで明確なフルーティーさがあるボトルは同価格帯ではそうありません。同蒸留所の個性を知る上でも、良い教材になると思います。



飲み方としては、冷やし過ぎると強みであるフルーティーさが閉じてしまうので、常温のストレートで。また加水はすぐに薄くなってしまうので、しても少量までがお勧めです。
ロックも試しましたが、上述の変化から向いているようには感じませんでした。
チューハイ等で辛口・ドライな後味が好きな方は、ハイボールにしても楽しめると思います。