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ウイスキーはシングルモルトがソロで、 ブレンデットがオーケストラという例えがあります。(ソロはシングルカスクのほうがしっくりきますが。)
オーケストラで楽器の種類や個別の音色がわかって、初めて合わさった音の中から個別の音源を認識出来るようになるように、ウイスキーもまた
普段から様々なフレーバーを意識して飲むことで、香味の関連づけが 頭の中で整理され、感じる香味の幅をある程度引き上げることが出来ます。

こうして知識と経験を詰むことで、過去飲んだウイスキーで新しい発見があったり、キーモルトの判別もしやすくなっていきます。ウイスキーを深掘りする、テイスティングの楽しみでもありますね。
しかし何事にも限度というものがあり、流石にこれはやり過ぎだろうというブレンドがウイスキー側にいくつか存在ます。まるで飲み手の限界を試すようなバッティング、っていうかどうしてこんなモノ作ったとブレンダーにツッコミを入れたくなる。今夜はそんな1杯です。

SIGNATORY
"SUPREME"
Pure malt scotch whisky
Bottled 1997
Number Bottled 500
700ml 43%


暫定評価:★★★★★★(6)

香り:グレープフルーツ果汁や柑橘系の爽やかな香り立ち。続いてバタークッキーや軽くトーストしたパン、若干のケミカル香。艶があり複雑、そして熟成感が感じられる。少量加水すると白い花やアロエを思わせるシルキーで柔らかく甘い香りが立ってくる。

味:加水だが濃厚さを感じる口当たり。一瞬沸き立つパフューム。厚みのある麦芽感、クルミ、柑橘系のフレーバー。ホットケーキにアプリコットジャムのよう。中間からケミカルなクセ、そして微炭酸を思わせる程度のスパイス。ドライパイナップルを思わせるオーキーな香りが鼻に抜ける。
フィニッシュは微かなピートとグレープフルーツピールやワタのようなほろ苦さが長く続く。


ボトラーズのシグナトリー社が1997年に500本リリースした、"最高位"と名付けられたバッテッドモルト(ピュアモルト)ウイスキー。
国内流通量があったのかすら定かではありませんが、海外サイトもオークション系が中心で、完全にコレクターアイテムになっているようです。
シグナトリー社もまだまだ潤沢な長期熟成ストックがあり、ダンピーボトルで色々リリースしていた時代です。そんな当時のシグナトリーが、なんの記念か作っちゃったんですね。


(化粧箱に同封されているレシピ。)

まるでJ&Bのウルティマのごとく実に104蒸留所の50年代から90年代蒸留(ほぼ60~70年代)原酒をバッティングし、シェリー樽で6ヶ月間のマリッジ。リフィルシェリー樽だったのかあまりシェリー感は感じません。
全体としては突き抜けたフレーバーはありませんが、複雑で厚みがあり、実に飲み応えがあります。これだけ混ぜてありながらなんだかんだでまとまっており、最高位の名の通り旨いは旨いですが、なんというか力技でまとめた印象もあります。

レシピに光るアードベッグ1967、クライヌリッシュ1965、グレンファークラス1959、ラフロイグ1966、マッカラン1964、ハイランドパーク1965などのビッグネームに加え、キリーロッホ1972、ローズバンク1960、プルトニー1964、グレンモール1963などなど、通好みも盛りだくさん、ウイスキーファン垂涎のレシピ。
これだけの名だたる原酒、名酒を使って不味く作れたらそれこそ才能です。

ここまで混じってると冒頭に書いた認識のスキルなんてムリゲーです。このボトルは個性の強い要素がいくつか感じられるので「あぁこれはこの辺かも」というのはありますが、確証は持てませんし、そもそも異なる個性の原酒が混ざれば混ざるほど大きな塊的味になって飲み手側で感じられる要素は減っていく傾向にあるのがブレンドです。まして最善の組み合わせだなんて判別不可能(笑)。
ただ不思議なことにボウモアが入ってないんですよね、この当時のシグナトリーなら持っていたはずなんですが。97年なら今のようにボウモアの人気があった時期でもありませんし。
っていうかスイマセン1口ずつで良いんで個別に味見させてください・・・。

ちなみに序盤、一瞬パフュームが感じられるような気がするのですが、他の要素も強くすぐに消えてしまいます。それはレシピのエドラダワー1976を見てしまったからかもしれません。
味以上にネタ的な意味で圧倒される最高位のピュアモルト。それにしても面白いウイスキーでした。