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1963年のモルトを再現するというニュースに、「マジかよあのパフューム時代を再現するのか、チャレンジングだな」と戦慄したのは記憶に新しいところ。(グレンフィディック蒸留所は何があったのか、1960年代の蒸留でパフュームな原酒を生産した時期があります。)
よくよく読んでみると、再現したのは1963年蒸留ではなく流通で、再現するのは1950年代の蒸留。どっかの政党みたいな「~~に見える」的介錯で前フリをつぶしてしまいました。すいません、しょうも無い話です。

最近この手の当時復刻、再現ウイスキーが増えてきたように感じます。
温故知新、古きから学ぶ、それが良いとされた時代なのですからなおさら良いことだと思います。ただ果たしてどの程度再現されているのか・・・

GLENFIDDICH
"THE ORIGINAL"
40% 700ml
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暫定評価:★★★★★(5)

香り:平坦な香り立ちで、バニラや麦芽系のアロマ、ツンとした乾いた木香、摩り下ろしたリンゴの甘い香りもある。加水すると華やかな甘さが前面に出てくるが、全体的には薄さも強調される一長一短な印象。

味:スムーズな口当たりだがアルコール感が少々感じられる。香り同様の味わい、麦芽とバニラ、ほのかにレモンピールのほろ苦さ、ライトフレーバーで全体的に単調気味、フィニッシュはオーク系のバニラ、優しく甘い余韻。


ザ・オリジナルは、国外では2014年11月頃からリリースされており、その後サントリーが正規品として日本国内に引っ張ってきたもの。
一言でオフィシャル12年を丁寧に作った感じ。18年でもなければ30年でもない、良くも悪くもスタンダード。
実際使われた原酒は10年程度ということで、正直、特別な何かを期待すると、「おや?」となるボトルだと感じます。
ただ復刻という意味で、当時の市場等からよくよく考えてみると「なるほどな」と思う味でもあります。

1963年はグレンフリディックがシングルモルトを海外に初めて出荷した記念の年で、今回のオリジナルはその当時の味を復刻したものです。ラベルもその当時シングルモルトという名前が一般的で無いことを背景に、ストレートモルトという表現が使われています。
海外に出荷といっても当時のメインターゲットはアメリカ、ここでのブレイクがグレンフリディックをシングルモルト売り上げ世界一に導く基盤となります。アメリカ市場は相変わらずライトフレーバーなウイスキーが主流であり、別銘柄の話ですがスモーキーなウイスキーであるホワイトホースは売り上げが伸びず苦労したという話があるほどです。
その市場向けの商品として考えれば、今回の復刻版もある意味で当時に近い風味を再現していると言えそうです。もっとも、当時のスペイサイドモルトは、全体的な傾向を見るともう少しスモーキーでフルーティーだったんじゃないかとも思うのですが。 

ちなみにこのボトルの値段は、定価で1万ちょい。
評価に価格面は考慮していないものの、オフィシャルボトルとはいえ比較的若いモルトにこの価格は…強気ですねえ(´Д` )ウーン