三郎丸蒸留所 一口カスクオーナーを追加募集 7/5から

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7月1日、昨年に引き続き募集のあった、三郎丸蒸留所の1口樽オーナー制度。
同蒸留所の原酒をバーボン樽(バッファロートレース、ウッドフォード)でそれぞれ熟成させ、2本のシングルカスクウイスキーが5年後に手元に届くというもの。
昨年は数日で、今年は僅か1日で200口が埋まってしまい、その関心の高さが伺える結果となりました。

完売するとは思ってましたが、まさか即日とは。。。
思わぬ反響を受け、三郎丸では追加のオーナー50口を7月5日10時から募集するとのこと。
前回溢れてしまった方は必見ですね。

※応募はこちらから。

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この光景、新生三郎丸をまさにプロジェクト初期から見てきた自分にとって非常に感慨深いものがありました。
今から3年前、三郎丸がクラウドファンディングで改修資金を募った時。これまでのウイスキーの出来から、懐疑的な意見を述べる愛好家は少なくなく。昨年の原酒を飲むまで、自分もあれ程のものが出来るとは思ってなかったんですよね。(面白いものを持っているから、可能性は間違いなくあるとは某パンチョンの人と話していましたが。)

今、一度でも新生三郎丸のニューメイクを飲んだことがあるウイスキー関係の方であれば、少なくとも昔とは違うというイメージの払拭と、前向きな印象を持たない方は居ないと思うのです。
その点、小口でもカスクオーナーになれるという今回の試みが魅力的で、即完売するのも自然な流れだと思います。

一方、三郎丸蒸留所では今年の仕込みにかけて大規模な改修を実施しており、業界初の「鋳造製ポットスチル(ZEMON)」を2基導入。これまではステンレスと銅のハイブリット構造なスチル1基で初留も再留も行っていたところ。スチルを入れ換えて一般的な蒸留所と同様、初留と再留を同日に蒸留が出来るようになっています。

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(ポットスチル新旧。ネック角度と長さ、ラインアームの構造などは以前を参考に設計してあるとのことだが、鋳造という製造方法に加え、銅と錫の合金という新しい要素が酒質にどう作用するかは未知数。)

現在カットポイントや温度を探りつつ蒸留を行っている最中ということですが、昨年の酒質からどんな変化があるのか。実は後日伺う予定があるので、早速確認してきます。
本当は樽オーナー募集開始前に確認できていれば良かったのですが。。。きっと稲垣マネージャーのことです。今回も良いものを仕込んでくれていると期待しています。

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ロングモーン 15年 1980年代後半流通 43%

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LONGMORN 
YEARS 15 OLD 
Pure Highland Malt 
1980-1990's 
750ml 43% 

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封後1週間以内
場所:自宅
評価:★★★★★★★(7)

香り:軽い香ばしさと柔らかい酸を伴う麦芽香。若干青みがかったニュアンスがあるが、合わせてしっとりとした土っぽいピート香の奥には、ほのかな南国感はグアバ、パイナップルを思わせるフルーティーさが時間経過で開いてくる。

味:マイルドな口当たり。柔らかいコクとともに広がるのは、香り同様に香ばしい麦芽風味とほのかなピートのほろ苦さ。徐々に林檎のカラメル煮を思わせるフルーティーさに、トロピカルなフェロモン系のニュアンス。
余韻はほろ苦く、グレープフルーツと若干の植物っぽさが顔を出す。長いフィニッシュ。

加水のウイスキーとして完成度の高い1本。負担のない飲み口、柔らかいコクのある味わいと飲み手を飽きさせない複雑なアロマ。失われた南国系のニュアンスも備わっている。
全体としては突き抜けるタイプではなく、決して洗練されている訳でもない。田舎っぽいピーティーさも感じられる、オールドスタイルにも近い構成だが、逆にそれが尊い。加水不要、ストレートで。

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1980年代、シーグラム傘下となっていたロングモーン蒸留所からリリースされたオフィシャルボトル。北米や免税という限定した地域向けと思われる仕様で、通常ラインナップとして広く展開されたのは、その後1993年にリリースされたダンピーボトルの15年からだったようです。
日本市場はというと、遅れて1990年代に並行品が入っていたのか、その当時のものがリユース市場等に見られます。

TAXシールの表記などから、今回のボトルを1980年代後半の流通と仮定すると、蒸留時期は単純計算1970年代前半ということになります。
ロングモーン蒸留所の1970年代は増産と効率化、それによりキャラクターを近年寄りにシフトさせた時代。1972年にスチルを4基から6基に増やすと共に、再留側の加熱方式を石炭直火からスチーム加熱方式に変更(初留側は1994年にスチーム方式に変更)。また1974年にもスチルを2基増やし、トータルで倍増させています。

これらの変化が酒質にどのような影響を与えたかは諸説あると思いますが、1972年をロングモーンにおける世代の境目とすると、旧世代のものは麦感の厚さ、何よりトロピカルなフルーティーさが最大の特徴で、長期熟成でシェリー樽の濃い香味のなかであっても失われないもの。一方、73年以降急激にその特徴が変化したわけではありませんが、ボトラーズリリースを見ると1980年代にかけて徐々にドライな傾向が強くなっており、麦や樽以外に蒸留行程の変化も無視できない要素であると感じます。

さて、今回のボトルに使われている原酒は、上記の整理で考えれば両世代のものでしょう。主たる樽はアメリカンオークで2ndないし3rdフィルのシェリーバットやホグスヘッドと思われ、樽感の強く主張しない仕上がり故にベースの香味が分かりやすいですね。
加水ながら厚みとコクのある麦芽風味に、ロングモーンに求めるトロピカルなフルーティーさがじんわりと、しかし確実に備わっている。その後リリースされる15年ダンピーや16年に麦芽風味は共通する要素として感じられますが、該当するフルーティーさは系統の違いに繋がっています。

ブッシュミルズ 28年 1989-2018 メインモルト向け 48.6%

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IRISH SINGLE MALT WHISKY 
BUSHMILLS 
For Bar Main Malt 
AGED 28 YEARS 
Distilled 1989 
Bottled 2018 
700ml 48.6% 

グラス:テイスティンググラス
時期:不明
場所:Bar Main Malt 
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:濃厚なオークのニュアンス。黄桃やリンゴのコンポートを思わせるフルーティーさに加え、甘栗の香ばしさや薄めたキャラメルソース。若干青みがかったスパイシーさも感じる。

味:オーキーで粘性のあるリッチな口当たり。天津甘栗、キャラメルナッツ、黄桃の缶詰のとろりとした甘味。徐々に若干ケミカルなフルーティーさも混じってくる。 
余韻はドライで程よいウッディネス、紅茶を思わせるタンニンと、ややハイトーンだがオーキーな華やかさも伴う充実した長いフィニッシュ。

熟成した70年代蒸留のスペイサイドモルトのようなフレーバーと、アイリッシュのフルーティーさが混じりあった仕上がり。樽はリフィルシェリーホグスヘッドだろうか、全体的には樽由来のニュアンスが支配的だが、加水するとケミカルなフルーティーさが分かりやすくなる。

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BARメインモルト向け”となった”、ブッシュミルズ。そして、人類には早すぎたアイリッシュ。
近年のアイリッシュウイスキーと言えば、ジェネリックトロピカルとも例えられるケミカルなフルーティーさが特徴であり、特に長期熟成であるほど純粋なトロピカルフレーバーが期待されている傾向があります。
1988-1989年蒸溜などはその最たるところ。実際、昨年信濃屋からリリースされたジャポニズムや、TWA等各種ボトラーズからのリリースは、まさに該当するフルーティーさで多くの飲み手を虜にしました。

そのフレーバーを基準とするなら、この1989は些か異端な仕上がり。
余韻にかけて該当する要素は若干あるのですが、メインに感じられるのは樽由来のウッディなフルーティーさ。スペイサイド寄りのハイランドモルトを、アメリカンオークのリフィルシェリーホグスヘッドで長期熟成したような構成で、それも結構良い樽感が序盤を支配。酒質由来の要素と混ざりながらフィニッシュへと繋がる構成です。
もしブラインドで系統を拾い間違えると、ベンリアックやロングモーン、あるいはグレングラントあたりの同樽長熟、と答えるかもしれません。

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メインモルトはウイスキー好きの聖地として知られるBARのひとつであり、かつてはプライベートボトルBBI(ベンリアックバカ一代)のリリースや、ベンリアックの全リミテッドリリースが揃っていることでも有名でした。

それはひとえに、長熟ベンリアックにあったトロピカルなフルーティーさに、マスターである後藤さんが心奪われていたため。そして近年、その心は一部共通するフレーバーをもたらすアイリッシュへと移っており、バックバーは日に日にアイリッシュが増殖している状況。既に3/4以上が同ジャンルとなっていて、その他のウイスキーは背後の棚。いよいよアイルランドに制覇されようかという勢いです。(当人いわく、ベンリアックとは離婚調停中とのことw)

後「これな、他の89アイリッシュに比べると地味やねん。だから一般に売らんで抱えたんや。」
く「充分旨いじゃないですか。でも確かにアイリッシュというよりは、スコッチモルトの長熟っぽいですね。」
後「他の89アイリッシュと比べたらな。某メガネのとかめっちゃトロピカルやろ。」
く「確かに。でも我々が失われたトロピカルフレーバーを求めるように、この樽感も失われつつある味わいだと思いますよ。」
後「つまり我々人類には早すぎたんやな(笑)」

カウンター越しの会話。後藤さんのこれまでの好みから考えると、この原酒から感じるものはあったと思うのです。それも恐らくはポジティブな方向で。
それでもフープ経由等で一般にリリースしなかったのは、アイリッシュの今流行りの枠のなかで比較はしてほしくないという、親心のようなものがあったのか、あるいは愛ゆえの独占欲か。

そしてアイリッシュでありながらスペイサイドスコッチの長熟のような個性も備える今回の原酒は、スコットランドとアイルランドの交叉点にあるBAR メインモルトを象徴するボトルかもしれません。
現在の同店を体現したような味わい、神戸にお越しの際は是非お楽しみください。

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(2年半前のメインモルトのバックバー。この時アイリッシュはまだ半分に満たなかった。)

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