ボウモア 19年 1998-2017 アイラフェス2017向け 54.3%

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BOWMORE
THE FEIS ILE COLLECTION 2017
Aged 19 years
Distilled 1998
Bottled 2017
Cask type 1st fill Sherry punchon
700ml 54.3%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅(借り物@マッスルKさん)
時期:開封後1ヶ月未満
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:リッチでバタークリームのような濃厚な甘さを感じる香り立ち。スワリングするとレーズンやドライクランベリーの酸味、あわせてほのかにゴムっぽい癖、焦げた木材のような苦味、煙っぽさもある。

味:ややベタつきのある甘く濃厚な口当たり。ピリピリとしたハイプルーフらしい刺激と共に、レーズンバター、魚介系ダシ、たまり醤油、中間から焦げた木材やキャラメリゼのほろ苦さとスモーキーさが開く。
余韻はスモーキーで徐々に口内の水分が奪われドライに。ドライプルーン、アーモンド、ゴムっぽさとダシ系のニュアンスのまま長く続く 。

ねっとりと濃厚で甘いシェリー感の奥にスモーキーフレーバー。圧殺気味だが、近年リリースの中ではシェリー感に特筆すべき点がある。 
一口目は良いが、途中で水か、パンか、何かを間に挟むことで美味しさが継続する。時間経過で果実味が香りに開くようでもあり、開封後の変化も見逃せない。 飲み方はストレート、あるいは極少量の加水で。加水するとシェリー感のバランスが良くなると共に塩気が感じやすくなる。


アイラフェス2017を記念し、ボウモアからボトリングされた1本。熟成庫はお約束のヴォルトNo.1。フェスに参加した現地組関係からの情報で、前評判の高かったボトルでもあります。
その中身は非常に濃厚なシェリー系で、ベリーやレーズンなどの果実味を伴う部分が好印象。香木感はそれ程出ていませんが、この濃厚さはスパニッシュオークのカスクでしょう。
こうしたカスクがボウモアに限らず増えてくるのは、シェリー樽好きにはたまらなく嬉しいことでもあります。

一方でこのシェリー感、なるほどこれは確かに、と納得する部分でありつつも、ボウモアらしさとも言えるフルーティーさは圧殺気味。1998年、99年蒸留のボウモアは樽と合わせてフルーティーさが強くでる傾向にあるのですが、そうした酒質との バランスでは少々アンバランスだと感じました。
この辺は飲み手がボウモアに求める姿、キャラクターや見解の相違もあります。自分の感覚では厚化粧しすぎかなという印象でしたが、基本的には美味しいボトルなので、高く評価される方も多いでしょう。例えばモルトマニアックスでの高評価は待った無しだと思います(笑)。


ボトラーズ含めボウモア全体のリリースを見ていると、80年代に比べ、90年代のボウモアにはシェリーカスクが増えているように思います。
あくまで推測ですが、サントリー山崎など、シェリーカスクでこうした濃厚なタイプが多くありますから、樽の出どころとして同資本だけに共通するところがあったのかもしれません。

ただ、一部に共通するのが硫黄とは違うゴムのような癖を伴うケース。このボトルも例に漏れず、そのキャラクターが若干感じられます。
恐らく、樽の香味としてはそこまでゴム系ではないのでしょうけれど、ボウモアのピートやヨードなどのニュアンスがシェリー樽のウッディさと組み合わさって、そう認識されてしまうのかなと思います。

余談ですが、ボウモアのアイラフェスボトルはハンドフィルでその場で詰めて販売していたそうですが、今年はボトリング後のものが販売されていたとのこと。 
まあハンドフィルと言いつつそうした体制で販売している蒸留所も少なからずありますから、時間が短縮出来るのは良いこととしても、自分の手で詰められないのはちょっと寂しいですね。



ピンウィニー 1970年代流通 特級表記 43%

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PINWINNIE
Royal Scotch Whisky 
No Age 
1970's
760ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml程度
場所:個人宅持ち寄り会@O氏
時期:不明
暫定評価:★★★★★(5)

香り:軽やかな香り立ち。ミントを思わせる爽やかなアロマ、ハッカ、スワリングするとクラッカーのような穀物感も開いてくる。

味:香り同様軽い口当たり。ざらつきのある紙っぽさ、淡く鼈甲飴のような古酒感、焼き芋を思わせる穀物感のある甘みが広がる。
余韻にかけてハッカの爽やかさ、スムーズでスッキリとしている。

爽やかで軽やか、若干紙っぽさは混じるが、基本的にはライトで繊細なタイプのブレンデッド。構成原酒のキャラクターからすれば順当な仕上がりとも言える。
持ち主いわくハイボーラー、この爽やかさは確かに。 


ピンウィニーは、インバーハウス社が製造していたブレンデッド。
1970年代発売の初期品はNA、その後1970年代後期から1980年代にかけて、Ⅻと12年表記と仕様を変えながらリリースを継続していたようです。

インバーハウスと言えば、グリーンのトールボトルのブレンデッド「インバーハウス」が普及価格帯にあり、所有蒸留所としてプルトニー、バルメナック、バルブレア、スペイバーンらが知られるところですが、これらの蒸留所は1990年代の買収劇により取得したもの。
同社は1980年代(正式には1988年に当時の親会社からの独立)を境にそのスタイルを大きく変えており、今回紹介する1970年代のそれは全く別物と言えます。

この当時のインバーハウス系列製品のキーモルトは、グレンフラグラー、キリーロッホ、アイルブレイ、ガーンヒース(グレーン)。。。今は亡き複合巨大蒸留所モファットで作られたタイプの異なる原酒と、ローランドのブラドノック蒸留所。
キリーロッホはノンピートでローランドタイプ、グレンフラグラーはハイランドタイプ、アイルブレイはヘビーピートでアイラ系統の整理して製造していたようです。
味わいはテイスティングの通り非常にライトでピート香もほぼ無いことから、その中でもキリーロッホ、グレンフラグラーが主体だったと考えられます。
実際、以下のグレンフラグラーにも共通するニュアンスが感じられました。


インバーハウス社の設立は1964年、当時はアメリカ資本を母体に持つ企業。アメリカ市場でウケていたライトタイプのブレンドに照準を合わせていたため、当時の原酒構成はこのようなローランドタイプで軽い味わいになったものと思われます。

モファット蒸留所では創業の1965年から先述の3タイプの原酒を製造したものの、キリーロッホとアイルブレイを1970年代始めに生産停止。ライトなハイランドモルトであるグレンフラグラー一本に絞るとともに、ほぼ同時期にローランドのブラドノックを買収。生産の効率化とみられる手段を取っています。
また、1980年代にウイスキー冬の時代が来ると、これらをバッサリ休止し、手放しているのも、主観ではありますがドライで効率的な"らしい"思考だなぁと感じてしまいます。

ブレンデッドは様々な原酒、つまりは蒸留所や会社が関わっているため、こうした企業側からのアプローチを調べてみるのも面白いですね。

羽生蒸留所 伊知郎 1991-2014 三越伊勢丹 54.1%

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羽生蒸留所伊知郎1991
ICHIRO 
HANYU DISTILLERY
Aged 23 years
Distilled 1991
Bottled 2014 
Cask type Madeira #1386 
700ml 54.1%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅@TWD氏
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(5-6)

香り:淡くサルファリーな煙っぽいニュアンス、樽香強くウッディで熟成した梅酒のような酸味、黒砂糖、若干の植物感を伴う。

味:かりんとうのような甘みと香ばしさ、スパイシーで徐々にサルファリー。樽由来の香味は香り同様に濃く、リッチな味わい。
余韻はほのかな酸味とローストアーモンド、樽由来の苦みやえぐみが強く残る。

やんちゃというか、アンバランスというか、ジャパニーズらしい強い樽感が特徴的。酒質としても度数以上にアタックが強く、酸味を伴うアロマが甘みとともに樽由来の香味で後押しされ、羽生らしさとして感じられる。 
開封後数年単位で時間が必要。加水は硫黄が強くなる傾向があり、ストレートで。


三越伊勢丹限定品で2014年に発売されたイチローズモルト、羽生のマディラカスク。下の写真にあるように、2000年蒸留のコニャックカスクと共にリリースされ、2組の翼が対を成す、美しいデザインのボトルです。
当時はジャパニーズウイスキーブームが一気に拡大した時期、特に大陸方面からの買い付けが増えた時期でもあり、コレクターズアイテムとしての側面もあったと記憶しています。

また今回のリリースに限らず、羽生蒸留所からは、シェリー、バーボン、コニャック、マディラ・・・他のメーカーと比べても多様な樽が使われており、当時どのような考えでこうした樽を調達し、熟成に使っていたのか興味深くもあります。

ISETAN伊知郎

テイスティングで触れた「ジャパニーズウイスキーらしさ」は、酒質のフレッシュさに対して強く出がちな樽の影響、その両者によるバランスです。
同じ熟成期間を経たウイスキーでも、ジャパニーズのほうが短い期間で総じて強く樽の影響を受けている印象があります。
しかし、ジャパニーズウイスキーはスコッチウイスキーの流れを汲むもの。スコットランドと何が違う事でそうした影響が出るのかとすると、それは「温度(気温)」にあると考えています。

例えばこのカスクに限らず、近年リリースされた羽生蒸留所の原酒はほぼ全て、羽生で1度熟成された後、福島県郡山市の笹の川酒造の貯蔵庫に移され、そこで5~6年程度の時間をすごし、さらに今度は秩父に戻るというプロセスを経ています。
気象庁で過去の統計データを見てみると、羽生市のすぐ傍、気象台のある熊谷では2000年時、最高気温39.7度を9月に記録(最低気温は2月にマイナス4度)。スコットランドの平均気温を見ていただければ違いは一目瞭然、日本の方が全般的に高い温度環境の中で熟成されていたことがわかります。 

熟成のメカニズムでは、気温が高くなると樽材が膨張するため、寒い時期と比較して圧倒的にエキスが出ます。あまりに出すぎて、えぐみ、タンニンが強くなりすぎることも珍しくありません。
また、熟成はエキスだけで成り立つものではなく、寒さも必要です。低音環境下では樽材が縮み、これにより樽が呼吸するとされる条件が整うだけでなく、ウイスキーそのものも温度による体積の膨張、縮小、アルコールなどの揮発を繰り返していきます。
ウイスキーの熟成は"樽の呼吸"を伴うものであり、寒暖の差が大きいほうが熟成が早いとされるのは、こうした経緯によるわけです。

一方で気温の変化が比較的安定して、かつ冷温な環境下で長期間熟成させるほうが、分子の結合(あるいは樽材の縮小により産まれる微細な隙間)によりアルコール感が落ち着きやすいとする説もあります。
日本のクラフト系のウイスキーの大半は、羽生のようにツンとしたアルコール感と強い樽香が特徴的と感じるのは、こうした熟成環境によるところもあるのではないかと考えると、スコッチウイスキーとのスタイルの違いと環境の整合が取れるなと感じています。

ちなみに、この羽生の原酒は2004年頃に笹の川酒造の熟成庫に保管場所を移したわけですが、郡山市の気温は羽生市に比べると低く、しかし寒暖差という点では大きい傾向にありました。
怪我の功名というか、ポジティブな経緯ではないものの、これらの背景を考えれば、福島での熟成はそれはそれで価値のあるものだったのではないかと思えてきます。

先日、ブラインドで羽生のモルトを出題したところ、ハウススタイルついでにそんな話をする機会がありましたので、こちらでも自分の考えをまとめさせて頂きました。

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