新設されるクラフトディスティラリー、北海道、茨城、静岡、岡山、4蒸留所の状況まとめ

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昨今のウイスキーブームに端を発し、日本各地でウイスキー蒸留所の建設計画や、既存設備を使ってのウイスキー事業参入の話が続々と持ち上がっています。

かつて昭和の時代にあった地ウイスキーブームを連想させるような流れ。
ここでは今風にクラフトウイスキーブームと言いましょうか。
「どうせまた淘汰されていくんじゃないか」
生産から出荷まで時間のかかるのがウイスキーです。熟成している間にブームが終わってしまった、なんていうシナリオも十分あり得ます。

しかし当時と異なり、今の市場にはクラフトウイスキーが地位を確立する土壌が整っています。
違いはブレンドウイスキー全盛だった市場に、シングルモルトウイスキーが地位を確立していること。
少量生産で次々とバッチを変えていく、アラン蒸留所などに見られるスタイルもファンの中で受け入れられていること。
また、インターネットの普及により、独自で販路を確立することも可能であること。
海外への販路が確立出来れば、国内のブームの影響は最小限に抑えられること。

多種多様なモルト原酒、グレーン原酒、ブレンド技術。さらにはブレンドして加水したことで大量に生産されるウイスキーを販売するための販路が必要とされていた当時と異なり、少量生産少量出荷で、大手メーカーに比べてスピーディーな商品開発がマイクロディスティラリーにとっては追い風となり得る可能性を秘めています。

さて、昨日笹の川酒造の山桜を紹介し、先週は静岡蒸留所について記事にしました。
ここで現在計画されている日本各地のクラフトウイスキーの蒸留計画、参入計画について、現時点の情報をまとめます。


1.北海道厚岸蒸留所(堅展実業)※
東京で食材・酒類の輸出入を手がける"堅展実業"が計画中。
建設予定地は既に定まっており、2014年11月に厚岸町と事業化に向けた協定書に調印済み。
敷地面積は2960平方メートルで、蒸留棟1棟と事務所棟1棟、発酵槽5基と蒸留器2基を設置予定。
2016年9月までに酒類製造免許の取得をめざしており、生産するのはモルトウイスキーで生産能力は年間3万リットル。
先日紹介した静岡よりも小規模な蒸留所となります。
仕込む原酒はピーテッドタイプを予定しているとか。

輸入、輸出業をしているメーカーであり、販路を広げることは純粋な酒造メーカーよりも心得ていそうです。
同社は過去蒸留所建設場所の選定のため、購入した原酒の熟成実験を同市内で行っており、そうしたデータもプラスに働く可能性はあります。
堅展実業WEBページ・・・は無いようですが、蒸留計画の詳細は以下日経新聞記事にも掲載されています。

堅展実業、道東初のウイスキー蒸留所 厚岸町で16年稼働
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO80136200V21C14A1L41000/


2.茨城蒸留所(木内酒造)※
同社はネストビールを中心に、クラフトビールの市場に地位を確立している有名メーカー。
日本のみならず海外への販路を持っているだけでなく、元々ビアスピリッツにグラッパに、蒸留酒事業も実施している関係で酒類総合メーカーとしてのノウハウもあります。
その木内酒造が先日、新事業に向けた準備が進行中としてFacebook上にUPした写真が以下です。
どう見ても蒸留設備のポットスチルに、連続式のグラッパ蒸留器のような…グレーン用?も。奥にはシェリー樽と思しき黒塗りの樽も見えます。


写真引用:木内酒造合資会社Facebookページ

"写真は新事業に関わる重要な機械、何に使われるものか想像しながら楽しみにお待ちください。"
とはメーカーのコメント。いやはや、これは期待せざるを得ないですよ。
ちなみに写真に写った樽は、某有名蒸留所に卸しているメーカーから買っているという・・・。

木内酒造は上述のようにネストビールがあり、そのビールをウイスキー樽で熟成させた製品も販売しています。
自社でウイスキーを作ったとなれば、その樽がビールにまわり、ビア樽がウイスキーにまわる。勿論その他の蒸留酒との連携も可能。
なにこのループw
個人的に、静岡と並んで続報が楽しみなメーカーです。

木内酒造WEBページ
http://www.kodawari.cc/?jp_home.html


3.静岡蒸留所(ガイアフロー)
こちらは特に追記は無いですね。
ブラッカダー社と繋がりがあることで海外への販路も持っている、期待が出来るメーカーです。
詳細は別記事で確認頂くとして、概要だけまとめておきます。

建設場所:静岡県玉川地区
敷地面積:2000㎡
生産規模:ポットスチル2器、年間10万リットル程度
着工開始:2015年9月
建設計画:年明けまでに蒸留所と熟成庫を1棟ずつ建設
製造開始:2016年春(製造免許もこのころまでに取得)
販売開始:2019年頃

関連記事は以下から。
http://whiskywarehouse.blog.jp/archives/cat_873847.html

ガイアフローのWEBページは以下から。
http://www.gaiaflow.co.jp/


4.岡山蒸留所(宮下酒造株式会社)※
このメーカーほど不遇なことはないなと、クラフトディスティラリーの話題が出るたびに思っていました。
なんというか時期が悪かった。独歩ビールや日本酒等を製造販売する宮下酒造が、2015年の設立100周年に向けた記念事業としてウイスキーの製造免許を取得し、仕込みを開始したのは2012年のことです。
本格的なブームの来る前で、まだそこまで話題にならなかったんですよね。なので静岡や厚岸は知っていても岡山を知らないという方は結構居るようです。

当時の仕込みはビールや焼酎用の設備を流用しており、まさに"地ウイスキー"という感じです。
麦芽は岡山県産とドイツ産をブレンド。水は旭川の伏流水を自社敷地内の井戸水。
麦芽の配合割合や酵母の種類、発酵、蒸留時の温度などを少しずつ変えながら10回に分け、原酒約1千リットルを仕込んだとのこと。
原酒は今年で3年が経過しするため、お披露目まであと僅かというところに来ています。


とはいえ焼酎用の蒸留設備はステンレス製だったと思うので、原酒の傾向は唸らされる内容になる可能性は高いですが、同社は2015年、ウイスキー用のポットスチルを新規導入しており、今後はこれまでの仕込みとは違う形になるため、新しいクラフトディスティラリーとしての活躍が期待できそうです

当時の状況は以下の新聞記事、メーカーWebサイトに情報がまとめられています。

宮下酒造Webページ
http://www.msb.co.jp/tag/%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC/


※蒸留所の名称は、一部決定しているものを除き、仮称として地域の名称としています。



笹の川酒造 山桜15年 シェリーウッドフィニッシュ・カスクストレングス

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とある方から貴重なボトルのテイスティング機会を頂きました。
いや、これまでもかなり多くの方からそういう機会を頂いているのですが、今回は「ブログ用にボトルがあったほうが良いでしょ」って、ボトルごとレンタル。受け取ってみたら未開封ボトルだったというすさまじいオマケ付きで(汗) 。

自分は酒業界と無縁の環境で働いていて、「くりりん」という本名と全然関係ないHNも一応名乗っています。
そんなどこの誰ともわからないヤツでも真剣にやってると、こうして協力してくれる方が出てくるんですよね。
別に自分に協力したところで何が出てくるわけでも無いのに。これ、結構感動的な出来事です。
これまでも多くの愛好家、関係者の皆様から、諸々の終売・ニューリリース情報、在庫情報、テイスティング会への参加・・・本当にいろんな情報・機会を頂いています。
もうなんていうか、感謝しかありません。

雑談が長くなりそうなのでそろそろテイスティングに移ります。今回の更新は、もちろんそのテイスティングの機会を頂いた1本です。


YAMAZAKURA 
Aged 15 Years 
Sherry wood finish 
Cask strength 
Sasanokawa shuzo Japan 
59% 700ml 

評価:★★★★★★(6) 

香り:注ぎたては黒砂糖の香りが感じられるが、すぐにその他のアロマと一体化していく。
アロエのような植物感とシェリー樽のニュアンスを伴う甘い香りとかすかな酸味、ハーブの爽やかさ。 加水すると白葡萄、ハーブが際立つ。

味:注いだ直後は硬さがあり、微かなサルファリーとシェリー樽のニュアンス。様々な樽香やフレーバーがあってばらつきも感じるが、時間を置くとトカイワインのような甘口でとろりとしたテクスチャーに変化。蜂蜜や煮た林檎を思わせるリッチな甘さ、和三盆、ハーブ、中盤からピリピリとしたスパイスと、ほのかなウッディネス。 鼻抜けは品の良い木香、余韻はドライでスパイシー。


今年2月、突如笹の川酒造からリリースされた山桜15年ピュアモルト。このシェリーカスクフィニッシュは、その後続となったギフト向け商品で、某デパートのギフト品としては20本限定で販売されたボトル。(として"は"、ですよ。)
笹の川酒造で蒸留が行われていた当時の原酒がメインで、樽で15年間熟成させた後、タンクで5年以上貯蔵、最後はシェリー樽でフィニッシュ。通常の山桜15年と同じ系譜で、 仕上げが異なる造りです。

当ブログの山桜15年の記事は以下。
 
シェリー樽での熟成期間は不明でしたが、シェリーウッドフィニッシュでこの価格(3万4000円)や、ラベルの色合いなどから、少なくともマッカラン12年くらいの色合いはあるんじゃないか、と思っていました。しかしそんなことは無く、香味のシェリー感も思ったほどはありません。おそらくリフィルシェリー樽を使ったのでしょう。フィニッシュの期間も、あって1~2年程度という印象です。
フィニッシュに使った樽は笹の川酒造が持っている樽とすると、例えば羽生蒸留所の原酒を払いだした後のシェリーカスクを使ったのかなと見ています。

全体の出来としては通常の山桜15年が、バッティングだフィニッシュだで、細いボディにこてこてと香味が乗っていてうるさく感じましたが、こちらはハイプルーフでボディがしっかりしているので、まだまとまりがあります。(相変わらず色々感じる味、地ウイスキーくささはありますがw) 
評価は5か6か迷うところですが、通常のカスクや加水15年よりはまとまってるので6でいきますか。


さて、樽の詳細は、きっと現地在住のウイスキー仲間が調べ上げてくれると思うので(笑)。
ここではフィニッシュに使われた樽が、羽生のリフィルシェリーカスクであると仮定して、羽生蒸留所と笹の川蒸留所にあるエピソードを紹介しようと思います。(休日のパパ業務もあって、この話をまとめるには時間が足りず、日曜まで使ってしまいましたw。 )

笹の川酒造と羽生蒸留所の関係は、多くの方がおおよそご存知のことと思います。
羽生蒸留所の保有者であった日の出みりんが原酒を破棄しようとした際、現イチローズモルトの肥土一郎氏の依頼に応じて一時的に原酒を同社の熟成庫に仮置きしていたという話。この話は少々端折られた部分があって、実際は酒税法の関係で仮置きは出来ず、笹の川酒造が一時的に原酒を買い取ったのだそうです。(肥土氏が退職金などを当てて買い取っているため、結果的には同じことなのでしょうけれど。) 
そのため、イチローズモルト初期の頃のリリースは笹の川酒造を通しての販売となっています。
いくら一時的とはいえ、明日どうなるかもわからない個人の依頼で、あれだけの原酒を買い取ってしまう。また、笹の川は熟成庫というような専用の建物は無く、倉庫の一部が熟成スペースのような形になっているのですが、サイズの大きなシェリー樽を収容するために、ラックの改造までしたとのこと。
なんていうか、笹の川さん男気あふれすぎですね。

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(2012年10月、ウイスキー仲間の黒氏により撮影された、笹の川酒造の熟成スペース。羽生蒸留所のものと思われるシェリー樽。今回使われた樽はひょっとして・・・)

そうした背景もあって、肥土氏は原酒を笹の川から秩父に移動させる際、いくつか樽を笹の川に残していかれたそうです。
笹の川酒造は当時既にウイスキー用のポットスチルは撤去してしまっていましたが、買い付けた原酒などを使ってチェリーをはじめとしたウイスキー製品のリリースは続けていました。そして国内でハイボールブームが起こり、ウイスキーに再び光が当たり始め、焼酎の設備などを流用してウイスキー事業に再度参入をする計画をしていた矢先・・・震災により保有していた関連設備が全てダメになってしまったそうです。
あの震災は、本当に多くのものを我々から奪っていきました。


2015年、笹の川酒造は1765年の設立から250年を数えました。
まさに節目の年、今年こうして様々なリリースがあることは記念の狙いもあるのかもしれません。(実際それにあわせて原酒買い付けの動きもあったようですし。)
そこに羽生の樽を使ったフィニッシュとあれば、上述の背景もあってなんともドラマを感じます。
まぁ正直、このリリースに関しては、ちょっと樽を詰め替えただけでこの価格は無いだろ~っていうか、もうひとつのカスクストレングスが700ml換算でも半額以下なのに、何のコストを載せたんですかという気持ちが無いわけではないので、無理やり納得させてる感もあるのですが(笑)。

ちなみに250周年の節目を迎えた笹の川では、ウイスキー事業参入の計画も検討されているそうです。
FB経由の情報で、まだ話半分レベルですが、次はピーテッド原酒を仕込みたいと。
少なくとも一連の山桜シリーズは笹の川酒造の新時代への狼煙として、同社の名前を再び世の中に知らしめるには、充分すぎる効果があったように感じます。
今後の動き、リリースも楽しみにしています。


追記:この記事は、ボトルを貸していただいたS氏。写真や多くの情報を頂きました黒氏、S氏(ボトルのS氏とは別な方)、W氏など多くの方々からの情報を元に書かせていただいております。重ねて感謝申し上げます。

ホワイトホース12年デラックス 特級 1980年代流通

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昨日はウイスキー仲間と武蔵新城でベトナム料理を堪能した後、川口のアラサイドをハシゴ。
アバウトな店構えとは正反対に料理はコスパも質も素晴らしい。ウイスキーブログでなければ食べ歩きブログよろしく記事が皿の写真で溢れていたところです。酒のほうは結局通算でビール3杯、ハイボール1杯、ストレート1杯しか飲んでないので、帰ってきてからフィニッシュの1杯を投入(笑)

先日、オークションで購入したところ、届いてみたら不良品だったので購入し直した白馬デラックス。
新しく届いたボトルを開けてみたのですが、あれ、これあんまり状態良くないんじゃね? 疑惑。
少なくとも開封済みで届いたボトルの注ぎ口から嗅いだ香りのほうが良かったような・・・。

オールドボトルに手を伸ばす以上は劣化等のリスクは織り込み済み
また、原理はよくわからないのですが、口開けは香りが"引きこもっている"ケースが多々あります。
主に甘みが感じられない事が多いですね、後は全体がぼやけてしまっていたり。
これらは時間を置くと改善されることが多く、1週間ほど放置して改めてテイスティングしてみたところ、ある程度改善が見られました。

WHITE HORSE
Aged 12 years
Deluxe
43% 750ml
1980's

評価:★★★★★★(6)

香り:カラメルソースを思わせるどっしりとした甘苦さと、土っぽさ、たき火のような強いスモーキーさ。奥には微かに麦芽系の柔らかい香味も見え隠れするが、複雑さはあまりなく直球一本槍。

味:とろりとした口当たりで濃厚、ピーティー、カラメルの甘み、微かにレーズン。
ボディーはあまり厚みはなく、本ボトルに関しては樹脂系の違和感が少々、余韻はスモーキーでビター。

ラガヴーリンをキーモルトとして開発、1980年代後半頃に販売されたホワイトホースの上級品。
それってローガンじゃんってツッコミは・・・まぁこの時期のローガンよりも味が濃い・・・かな。
強いスモーキーさ、はっきりとラガヴーリンを思わせる個性があり、どっしりした味に反してややボディに薄さは感じますが、手軽に当時のラガヴーリンを感じることが出来る点は評価に値する1本です。
ストレートで飲む分には上述のボディの軽さはあまり気になりませんが、ハイボールにすると中間以降の味が薄く感じるので濃いめに作るのがお勧めです。

ホワイトホースのキーモルトは、主にラガヴーリン、クライゲラヒ、グレンエルギンの3種類。
1960年代、1970年代初頭まではラガヴーリン主体(あるいは結果としてラガブーリンの影響が強い)の構成だったものの、その後ブランドが多様化したり、拡販路線によりライトタイプの市場を意識した結果、香味に変化が見られます。
1970年代、特に1970年代初頭以前に流通したラベル違いのボトルはスモーキーさが強く際だった個性を感じます。他方で、1980年代にはいり、馬ロゴが小さくなったあたりのボトルは、760ml仕様であってもだいぶライトタイプになっています。
まぁこの辺の話はホワイトホースのオールドをUPするときに、改めて書かせて頂くとして・・・。

1980年代中頃から後期頃、12年デラックスを含む、主要なモルトが異なる以下3種類のブレンドが販売されます。

・ホワイトホースマイルド (クライゲラヒ)
・ホワイトホースエクストラファイン (グレンエルギン)
・ホワイトホース12年デラックス (ラガヴーリン)

この3種類では格段にデラックスの出来が良いのですが、エクストラファインは外観が素晴らしく、藍色の下地に金の縁取り、そこに大きく書かれた白馬の絵が美しい。イヤでも目を引くボトルは、BARのみならずギフトでも重宝されたと聞きます。味も悪くなかったですし。
マイルドは・・・個人的にホワイトホースの系譜はピーティーなブレンドにありと考えて居るので、ここではノーコメント。
デラックスについては上述の通りの構成ですが、当時1980年代後半、だいたいのブレンドはライトタイプになっている中で、これだけリッチなピート感のあるブレンドを出してくるのは驚きです。

このボトルの流通期間はそこまで長くありませんでしたが、タマは多かったのか今でもそこそこ流通が見られます。
オールドラガヴーリンを飲みたいと思ったら、まずこのボトルを試してみるのは、オススメですよ。

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