厚岸蒸留所 ニューボーン 2019 ミズナラカスク 55% Foundations 3

カテゴリ:
IMG_20190308_102749
THE AKKESHI 
NEW BORN 2019 
HOKKAIDO MIZUNARA CASK 
Foundations 3 
Single Malt Spirit 
Non Peated 
200ml 55

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後数日以内
場所:自宅
評価:ー

香り:若さに通じる金柑などの柑橘や乳酸系の酸、乾いた木香と軽い香ばしさを伴う香り立ち。
スワリングするとバニラや蒸かしたサツマイモのような甘いアロマ。微かにニッキやハーブ、レモングラスなどのスパイス香、あるいは新しい和室を思わせるような要素が混じる。

味:荒さはあるが、熟成を考えればスムーズな飲み口。
香り同様軽い乳酸や柑橘の酸味。徐々にスパイシーでありながらクリーミーな舌当たり。薄めた蜂蜜、ほうじ茶や干し草、おがくずを思わせるビターなウッディネスが、ヒリヒリとした刺激と合わせて口内に残る。

使われた樽のサイズの関係か、樽由来の要素はそこまで過剰ではなく、酒質由来の若いニュアンスが主体で、ゆっくりと熟成が進んでいることを感じる。ボディは適度にあり、少量加水するとバッティングの影響か少し水っぽさが出るように感じられる一方、香味の酸や荒らさが落ち着き、微かにオーキーな要素があるようにも。
今まさに芽吹こうとする原酒のスタートライン。ストレート、または今の段階で楽しむならハイボールで。

IMG_20190308_234330

北海道、厚岸蒸留所シングルモルト、3年熟成への道。
今回のテイスティングは、その熟成過程でリリースされることが発表されている、4作のニューボーン(ウイスキースピリッツ)のサードリリースであり、北海道産ミズナラ樽で8ヶ月から23ヶ月熟成した原酒10樽をバッティングしたものです。

これまでの2作は蒸留所の酒質やハウススタイルの基準、原点を知ってもらうことを目的としたような、ノンピートとピーテッドモルトのバーボンカスク熟成品でした。
一方今回のリリースは少々位置付けが異なっており、使われた原酒の熟成期間が最長で2年弱に伸びたことによる熟成感の違いというよりは、今後北海道産のシングルモルトとして展開を予定している同地域産のミズナラ樽を用いた原酒の・・・言わば”樽香の原点”を知るリリースと言えるのではないでしょうか。

ウイスキーの最低熟成年数を3年。これを植物の成長に準えて芽吹きとすれば、今回のリリースはまだ土の中で種から根が少し伸びたぐらいの状態でしょう。その段階のものを知って、これからの成長と未来に想いを馳せながら楽しむ。
「ミズナラ樽は、伽羅や白檀などのオリエンタルフレーバーをもたらすと言われています。果たしてボトルの中の原酒は、双葉より芳しく香り立つことが出来ますでしょうか。」
というラベルに書かれた文面が、まさにこのリリースの位置付けを表しているように感じます。

IMG_20190308_011740

よって今回のレビューは、酒質部分よりも樽要素に重点を置いて考察していきます。
ミズナラ樽の香味と言えば、多くの消費者に求められるのが上記の文章にある伽羅や白檀のような。。。サントリーがリリースしている山崎のそれであるわけですが、現時点で厚岸に植えられた"種"から、その香りは感じられません。

ですが、これまで短期熟成から長期熟成、あるいはウッドチップまで、色々ミズナラに関する原酒を飲んできて感じるのは、ミズナラ樽で短期間の場合はスパイシーな香味のほうが強く出る傾向にあり、長期熟成の中で香木のようなアロマ、オーク樽らしい華やかさ、フルーティーな香味が、いわゆるオリエンタルな要素として徐々に濃くなってくる印象があります。
(そうした特性故、樽の使用状態や熟成環境のバランスが重要と考えられるだけでなく。あるいはバーボンバレルである程度熟成した原酒を新樽のミズナラ樽でフィニッシュすると、サントリー系の香味を擬似的に再現できたという事例もあります。)

したがって現時点の原酒でも、これはこれでミズナラ樽らしい特性が感じられる、可能性を秘めた種であると言えます。
今後この原酒が育った先にオリエンタルなフレーバーがあるかはまだわかりませんが、方向性としては、微かに日本家屋(和室)のような要素やクリーミーさが香味に混じるため、樽の要素が徐々に濃くなっていくなかで可能性は充分あると思います。
もちろん、そのためには3年だけでなく、5年、10年という時間が必要だとは思いますが・・・日本の環境でどこまで熟成を続けられるか。その点、今回のリリースによって生まれたリフィルのミズナラ樽10樽の存在も、長期熟成を目指したウイスキー作りの助けになると思います。

さて、気がつけば厚岸蒸留所創業の2016年から3年目となる2019年です。
ニューボーンのリリースも残すところあと1作。これはグレーン等の原酒を調達し、バーボン、シェリー、ミズナラ樽の各種厚岸原酒をブレンドしたブレンデッドウイスキーでリリースされるそうです。
そしてシングルモルト区分でリリースされる3年熟成の仕上がりは如何に。今年あるいは来年初頭の、楽しみなイベントの一つなのです。

IMG_20190309_190913
(厚岸蒸留所ニューボーン第1弾から第3弾。並べてみるとボトルやラベルの色合いだけでなく、箱のデザインも微妙に異なっており、ロゴがリリース毎に一つずつ増えていっている。今回のリリース、比較するなら第1弾と。)

山崎 9年 エッセンスオブサントリー2019 スパニッシュオーク 56%

カテゴリ:
IMG_20190301_221803
THE ESSENCE of SUNTORY 
YAMAZAKI 
SPANISH OAK  
(New Wood) 
Aged 9 years 
Distilled 2009  
Bottled 2019 
500ml 56% 

グラス:サントリーテイスティンググラス
時期:開封当日&数日後
場所:日比谷BAR
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ドライでやや荒さも感じるウッディな香り立ち。焦げた樹皮やコーヒーのような苦さ、渋みを連想させるアロマに、そこからかりんとうや黒砂糖の甘み、徐々に甘酸っぱくリッチなダークフルーツ香。微かに香木のような要素も混じる濃厚なアロマ。

味:リッチでパワフル、ねっとりとして存在感のあるウッディさ。タンニンと共にダークフルーツの甘酸っぱさと、カカオ多めのアーモンドチョコレート。合わせて少しゴムのような樹液っぽさが主張する。
余韻はウッディでビター、そしてスパイシー。存在感のあるタンニンと、香り同様に香木を思わせるニュアンスを伴う深く甘い樽香が口内に残って、ひりつくような刺激と共に長く続く。

若干赤みがかった濃厚な色合いが美しい。酒質の若さを濃い樽感でマスクしている構成で、樽由来の要素や樹液を思わせるようなニュアンスを感じた後で、角の取りきれていない刺激が顔を出してくる。
少量加水するとクリーミーな甘み、プルーンを思わせるニュアンスが開くが、タンニンやほうじ茶のようなウッディさは変わらず後半を支配する。

IMG_20190301_221853

エッセンスオブサントリー第2弾、最後に紹介するのは、スパニッシュオークの”新樽”で熟成させた山崎原酒。今回のリリース3本のなかではこれが一番興味がありました。
なにせ、スパニッシュオークは近年シーズニングのシェリーカスクにおける主要な樽材のひとつでありながら、アメリカンホワイトオークと違い、純粋な新樽の香味がどう影響するかは様々なシェリー樽熟成のウイスキーを飲んで、共通項から推測するくらいしか手段がなかったためです。

いざ飲んで見ると、スパニッシュオークらしい香木的な要素もさることながら、これが本当に新樽なのか?ファーストフィルのシェリーカスクではないのか?
と、スペックを疑問視してしまうような系統の濃厚なフレーバー。ドライフルーツのような果実味や強いタンニンは木材の持つ香味成分、そして多孔性という性質に由来するところもあるのでしょう。一方で焦げたようなニュアンスも感じられることから、樽製造の際に適度にチャーしてあると推察。そうでなければ、この色合いは説明しづらいなと思います。

その上で、新樽でこの香味なら、シーズニング前の樽作りと処理で、熟成させるウイスキーの仕上がりはおおよそ決まっているとも言えます。
例えば同じエッセンスオブサントリーのモンティージャワインカスクだと、焦げ感や樹液のような要素が低減している一方で、シェリー感と認識するであろうベースの香味は同じ。そこにシーズニング由来と思えるシロップっぽさや黒糖系の甘みが付与されているような。。。
つまりシーズニングでやっているのは色濃い果実味の付与ではなく、余計な灰汁抜きと、香味の仕上げ(短期のものはシェリーをいれた既成事実化とも・・・)のような印象すら受けます。
このボトル経験の有無で、近年のシェリー樽のシェリー感に関する印象がだいぶ変わるのではないでしょうか。

IMG_20190301_221300
(3種飲み比べ。それぞれの原酒の経験のみならず、飲み比べることで新樽にある香味がシーズニングやリフィルでどう変化したか、その関連性も知ることが出来る。
なお1ショットずつ注文したものの、全部飲みきるころには、舌も鼻も肝臓も”情熱”にやられてしまい。。。度数の高さと香味の濃厚さから、飲み比べはハーフショットずつが適量かもしれない。)

原酒単品で見ると、シングルモルトやブレンドの厚みを出せるような濃厚なモルトが、10年弱の熟成でこれだけのレベルに仕上がってしまうのは純粋にすごい。物量がどれだけあるかわかりませんが、オフィシャルリリースの原酒不足解消の光明が見えるようです。
もちろん3本とも仕上がりは荒く、特にこの新樽山崎などは、カバランのソリストを連想するような構成でもあったのですが、熟成環境しかり新樽のパワーしかり、サントリーは日本でのウイスキー作りを考えて、本当に試行錯誤しているんだなと驚かされます。

今回のリリースは、そうした山崎のハウススタイルを構成する要素に加え、ウイスキーの熟成に必要な樽の中でも謎の多いシェリー樽の、シーズニングシェリーとスパニッシュオークの香味の関係性を紐解くヒントを貰えたような、素晴らしい教材でもあったわけです。(あるいは更なる迷宮への入り口とも。)
思っていた以上に奥が深く、味の満足度以上に考えさせられるリリースでした。
次があるなら、白州でピートレベル違いのアメリカンオーク3種とかを期待したいです。


余談。完成度は3本とも横並びであり、序列については完全に個人の好みの問題と言えますが、バランスで言えばリフィルシェリー、わかりやすい甘みを帯びた濃厚さはモンティージャ、樽材由来の要素が最も出た経験値断トツは今回の新樽。。。
全てに共通のニュアンスがある中で、味で一番を決めるなら、好みの要素が多かったものはモンティージャワインカスクでした。

アラン 21年 1996-2018 ウイスキーギャラリー 51.2%

カテゴリ:
IMG_20190221_220521
ARRAN 
Whisky Gallery 
Aged 21 years? 
Distilled 1996 
Bottled 2017 
Cask type Hogshead #317 
700ml 51.2% 

グラス:テイスティンググラス
場所:BAR LIVET
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでドライな香り立ち。オーキーなフルーティーさに、洋菓子を思わせる甘み、合わせて瓜やアロエのようなやや青みがかった植物系の要素も感じられる。

味:ドライでスパイシーで、木材のエキスが溶け込んだようなサラサラとした口当たり。砂糖のかかったドライファイバーパイナップルやココナッツ、香り同様に青みがかったニュアンスも感じられる。
余韻はドライなウッディネス、華やかなオーキーさを伴って長く続く。

いかにも近年系の樽使いという、華やかな仕上がりのハイランドスタイルのモルト。この仕上がりがアランらしいと言えばそうだが、少々樽が強く溶け出たようなドライなタイプである。加水すると黄色系の甘酸っぱいドライフルーツの香味が感じやすくなる。


ウイスク・イーがリリースしているオリジナルブランド「ウイスキーギャラリー」のセカンドリリース。なぜ”ギャラリー”かと言えば、その経緯はラベルに拘りがあるのですが、前作となるオルトモアは中身とラベルのイメージが合致しているとはお世辞にも言い難く、疑問だったところ。
その後いくつかリリースが続いており、今回のボトルはアランのひとつの区切りに到達したとも言える20年オーバーのスペックを記念するような、そんなデザインとして見ると前作ほどの違和感はありません。

5233baf6
(参考:ウイスキーギャラリー・オルトモア1997-2017。酒質の線は細いが、華やかな樽感主体の味わい。味は悪くなかったが、それでいてこのデザインは。。。)

一方、中身について若干の疑問が残ってしまったのがこのリリース。
アラン蒸留所の稼働2年目にあたる、1996年蒸留の原酒をホグスヘッド(おそらくバーボン)で熟成したもの・・・と思うのですが、ちょっとスペックが怪しい。
ラベルの表記は21年なのですが、メーカーの説明文や掲載スペックを見ると20年熟成となっています。流通時期が2017年10月からですから、ボトリングからリリースまでの時間を差し引いて考えると、20年とも21年とも、どちらの可能性も考えられるのです。

流石に数ヵ月差とも言える熟成の違いは判別不能。可能性があるとすれば、元々20年熟成のつもりでサンプル調達等を行っていたものの、ラベルの審査待ちをしていたら21年に入ってしまった・・・・とかでしょうか。
逆に言えば、そんな些細な違いは日本の夏場を越えるとかならともかく、冷涼なスコットランドでは気にする必要もないかもしれませんが。とりあえず本ボトルは約21年熟成ということで。

アランはつい先日、オフィシャル21年熟成のシングルモルトがリリースされており、その比較対象としてベース部分がわかりやすいタイプのボトルをテイスティングするために注文しました。なんというか、アランってプレーンというか、癖の無いハイランドタイプというか。本当につかみどころが無い酒質ですよね。
それが良さであり、安定感であり、アメリカンホワイトオーク系の樽のもたらす華やかなフルーティーさとの相性も良いのだと思いますが。。。
先日もブラインドでアランをいただいたのですが、ハイランド系の蒸留所を予想するばかりで、まったくアランにたどり着けませんでした。


週末・週明けに飲み会3件、そこに仕事の年度末進行が重なって3日ほどブログをサボってしまいました(笑)。
今日からまたマイペースに復活です。山崎に厚岸と注目のリリースもありますし、しばらくネタには困りません。後は仕事がなぁ・・・。

このページのトップヘ

見出し画像
×