エッセンスオブサントリー 白州シングルグレーン ライタイプ 57%

カテゴリ:
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THE ESSENCE OF SUNTORY
HAKUSYU
GRAIN WHISKY RYE TYPE
Aged 5 years
Distilled 2012
Bottled 2018
500ml 57%

グラス:サントリーテイスティング
場所:BAR飲み
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:クリアでつんとしたアタックの強さ。穀物系のバニラ香に柑橘、アロエ、微かにハーブ、華やかで淡い植物感を伴う。樽香は程よい程度で綺麗な香り立ち。

味:ピリピリとスパイシーな刺激、とろりとした粘性を伴う口当たり。華やかな穀物感、嫌味少なく淡いチャーオークのキャラメルの甘み、ハイプルーフらしく強い香味の広がりがある。
余韻は甘みが収斂し、ドライでほのかな焦げ感、ウッディで渋みを感じる。

ハイトーン気味のアタックの強さに比例して香味とも強く、しっかりとした穀物風味がライらしい華やかさと共に感じられる。グレーンと言うよりもはや綺麗めバーボンと言える味わい。熟成年数の割に余韻はドライでウッディな渋みが強いが、加水するとまろやかな口当たりに。キレの良い美味いウイスキーである。



エッセンスオブサントリーシリーズ2本目。「遊」の字をモチーフにしたラベルが用いられたこのボトルは、愛好家注目の一本とも言える、2013年から本格蒸留を開始した白州蒸留所連続式蒸留機によるグレーン原酒です。 (設備導入は2010年12月。)

当時のニューリリースによると、導入された設備の規模は知多の1/10程のスケールですが、その代わり様々な穀物ベースの原料を用いて原酒を作り分けることが出来るとのこと。
挑戦的かつ、時に遊び心を持たせたウイスキーを作れる白州蒸留所は、まさにサントリーのエッセンスであると言えます。

今回のライタイプのグレーンウイスキーは、蒸留時期から設備導入後の試験蒸留の時期に作られた原酒と考えられます。
また、ライタイプとの表記ですが、香味の厚みや傾向から、マッシュビルはライベースというわけでも、勿論糖化用のモルトを除いてライ麦100%とかではなく。ライの比率が50%を超えてくると露骨な華やかさとボディの軽さが出るので、むしろそう高い比率ではなく香味が感じやすくなる程度に留め、コーンなど他の穀物も使い香味を安定させている印象を受けました。
(確認したところ、ライの比率は30%とのことです。3/10追記。)
白州蒸留所の連続式蒸留機。

また、5年という熟成期間ながら、ウイスキーとして香味が仕上がっているのも特徴。それはテイスティングの通り、グレーンウイスキーと言うよりバーボンウイスキーと言う感じで、バーボンウイスキーなら5年熟成も珍しくはありませんが、これがブレンドにどう使われるのかは気になるところです。
最近角瓶が露骨に柑橘感というか爽やかさが出ているのは、知多グレーン以外にこうした若い原酒を使っているのかなとも感じます。

ちなみに近年、ウイスキーブームの到来を受けて各蒸留所で原酒増産が行われているわけですが、今回の設備導入は2010年というとハイボールブームに火がつき始め、角瓶用の原酒が足りない!山崎を出荷規制だ〜、なんて話が出始めたころ。今の状況からすれば限りなく平和だった時代ですが、その時点から将来を見据えて多彩な原酒づくりを始めていたサントリーの先見の明を感じると共に、今後の展開が楽しみになるリリースです。

※残り2種類のエッセンスオブサントリーのテイスティングノートはこちら

エッセンスオブサントリー 山崎 12年 2005-2018 ピーテッドモルト 49%

カテゴリ:
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THE ESSENCE OF SUNTORY
YAMAZAKI PEATED MALT
Aged 12 years
Distilled 2005
Bottled 2018
500ml 49%

グラス:サントリーテイスティング
場所:BAR飲み
時期:開封直後
評価:★★★★★★(6)

香り:柔らかい酸味を伴うスモーキーさ、土っぽいニュアンスや焦げた木材。奥から熟したピンクグレープフルーツ、ブラッドオレンジを思わせる柑橘感、ほのかにチーズの燻製のようなアクセントも。

味:燻した麦芽風味、グレープフルーツやアプリコットを思わせる熟成したモルトの風味。ボディに軽さがあるが、鼻抜けはしっかりとスモーキー。
余韻は蜜っぽい甘みとナッティなスモーキーさ。複雑でドライ、長く続く。

単一樽ではなくいくつかの種類が使われている印象。カリラとピーテッドのベンリアックを足し合わせたような、果実味とピーティーさ。ただアイラモルトと比べ物足りなさがあり、あくまで内陸のピーテッドという傾向。加水するとスモーキーさが引き立つ。ボディは軽めだが樽の強さとスモーキーな風味の中にある繊細さが、ジャパニーズらしさとしても感じられる。



エッセンスオブサントリーは、サントリーが世界に誇るブレンデッドウイスキーを作る上で欠かせない、その真髄"ESSENCE"たる、多彩な原酒の作り分けを楽しむためのシリーズ。
これまでも蒸留所やウイスキーイベントのブースなどで構成原酒は提供されてきましたが、この度量販店向けとして、一般的にリリースされるバーボン樽やシェリー樽などの構成とは異なる、山崎ピーテッドモルト、白州ライタイプグレーン、知多グレーンワインカスクの3種類が発売されました。

ラベルには、「響」を書かれた書家・萩野丹雪氏による、原酒のイメージを表す一文字「創」「遊」「夢」が書かれており、それぞれのラベルが一つの書画のような雰囲気を醸し出しています。これは空き瓶になっても飾っておきたいですね。 
リリースの概要については下記URL先も参照頂ければと思いますが、先月の発売を受けて早速飲んできましたので、一つずつ紹介していきます。

ご参考:サントリーのニューリリース「Essence of Suntory」について(2018/1/12)
まず一本目は、「創」の一文字が書かれたラベル、山崎蒸留所のピーテッドモルトです。
そのピーテッドモルトは、マスターブレンダーの輿水氏が個人所有のオーナーズカスクとして持っていた、などのトリビアもあるわけですが。山崎蒸留所でスモーキーフレーバーと言えば、かつては白札が煙臭いと受け入れられなかった要因を作ったとも言える香味で、その後はそれを抑える方向で商品開発がされてきたところ。普通にサントリーのラインナップを飲む上で、あまり意識しない香味という方も多いかもしれません。 (逆にニッカはスモーキーという声もありますよね。)

しかし、今やサントリーのウイスキーにおいて、深みや複雑さを出す上で欠かせない重要なワンピースとなっているのが、このピーテッド原酒です。
特に響などの上位グレードのブレンデッドを作る上では、100種類以上にもなると言われるレシピの中で、シェリー原酒とピート原酒の使い方が難しさであり、それが逆に創造性に繋がる要素でもあるという話でもあります。
今回のボトルは山崎蒸留所の違った一面を感じさせてくれると共に、今後既製品のウイスキーを飲む上で、今までピントが合わなかったところへの道しるべとも言えます。

また、こうして飲んでみて思うのは同じピーテッドでも、他の日本のモルトである白州や余市、あるいは秩父などのそれとはキャラクターがまったく異なるということですね。
ボディは香味に対して軽めながら、全体的にはさすがサントリーの技術力という感じで、ピートの個性をはっきりさせつつ、バッティングでしっかり味を作ってきた印象を受けました。 
ここに白州の原酒をブレンドすると厚みが増してさらに完成度が高まるのだと思いますが、個性を楽しむだけでなく、美味しさもある1本だと思います。

個人での購入は困難なシリーズと言えますが、都内では日比谷BARなどのサントリー系列店、並びにY'S Land BAR IANやGosseといった当ブログでも度々お世話になっているBARに、まとまって入荷しているようです。
なお、もし3種類同時に試される場合は、残りの2本は癖も香味も山崎ピーテッドモルトより強いため、山崎から試されることをオススメします。   

※残り2種類のエッセンスオブサントリーのテイスティングノートはこちら

バランタイン 30年 43% 2018年現行品

カテゴリ:
BALLANTINE'S
Aged 30 years
Blended Scotch Whisky
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR Black Heart
時期:不明
評価:★★★★★★(6)

香り:軽やかで穏やかな香り立ち。エステリーで線の細い華やかさ、薄めた蜂蜜、乾いたオークのバニラとウッディネス、微かにドライアップルなど、黄色いドライフルーツのアクセント。 

味:スムーズだがドライな口当たり。熟成したハイランドモルトを思わせる、オーキーでナッティさ、徐々に蜂蜜の甘みが膨らむように広がる。奥にはおしろいのような麦芽風味、ボディは軽いがまとまりは良い。
余韻は華やかでドライ、引っかかりは少なく何層ものフレーバーが解けるように優しく消えていく。   

香味共あまり強く主張しないため、ともすれば軽い味わいとも感じるが、逆に繊細で何かが突出していないバランスの良さとも言える。熟成したハイランドモルトをイメージさせるエステリーな味わいで、グレーンも自然な感じで混ざり合っている。少量加水すると、飲み口に柔らかいコクとほのかなピートを感じる。

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半世紀以上リリースが続いている、バランタインの最高峰たる30年熟成のブレンデッドウイスキー。今回のテイスティングアイテムは、2018年時点のラインナップで現行品となるボトルです。そういえば最近飲んでなかったなと、久しぶりに注文してみました。

バランタインのテイスティングでは、魔法の7柱として聞かれる蒸留所が引き合いに出されますが、現行品の構成原酒はスキャパ、ミルトンダフ、グレントファース、グレンバーギーを中核としており、この30年は特に熟成したそれらの華やかな香味が主体。個人的には、ミルトンダフやグレンバーギーを連想する要素がいくつか感じられました。
もちろん、バランタインはこれらの原酒だけで構成されているわけではなく、何十種類もが組み合わされてるわけですが、この4蒸留所以外ではロングモーンやグレンリベットなどの内陸の熟成したモルトを連想するニュアンスもあります。

また、オールドボトルのバランタイン30年では、特に1980年代以前で存在感を放ったピートフレーバーが希薄となり、現行品では隠し味レベル。少なくとも、アイラモルトのニュアンスは特に感じられません。
樽感はプレーンタイプで、何度も使ったリフィルシェリーバットなどで熟成されていると考えられます。
軽やかで引っかかりの少ない、整えられた硝子細工のように綺麗な味わいですね。

他方、テイスティングでも触れたように香味のバランスは良いものの、小さくまとまっているというか、軽いというか、ブレンドの方向性故にこれと言う感動は得づらい構成でもあります。
ただまあこのウイスキーが主役ではない、その場の引き立て役と考えるなら、これはこれでアリかなと。 
自分のようなコアな愛好家はウイスキーと常に向かい合って 、時に対話をするようにテイスティングするわけですが、そうではなくその場の空気、相手との会話、あるいは自分が他の物を楽しんでいる時。その空間の潤滑油となってくれるパートナーとしてこのボトルがあったら、なかなかいい仕事をしてくれるように思うのです。

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