グレンリベット 1961-1990 GM ライオンラベル 40%

カテゴリ:
GLENLIVET
GEORGE & J.G.SMITH'S
GORDON & MACPHAIL 
Distilled 1961
Bottled 1990's
750ml 40%

グラス:スピリッツスニフター
時期:不明
場所:BAR Sandrie
暫定評価:★★★★★★★★(8)

香り:艶やかで熟したイチゴやダークフルーツ、薄めたカラメルソース、ランシオを感じる柔らかいシェリー香。合わせて乾いた麦芽、微かに土っぽいピート香も感じる。

味:口当たりはドライでウッディだが、こなれていて柔らかい。香り同様のベリーや枝付きレーズンなどのニュアンスを伴うシェリー感が主体。
余韻はウッディだがやや粘性があり、トロピカル系統の果実味が感じられる。ドライで長いフィニッシュ。

ボディは少々緩く注ぎたてはドライな印象もあるが、香味とも加水と経年で柔らかく、何より時代を感じるベリー系のオールドシェリーと麦由来のトロピカルな要素が交わった妖艶な構成が垂涎ものの1本。


ALL MALT表記に時代を感じる、ライオンラベル(蒸留所ラベル)のグレンリベット。相当種類が出ているシリーズで、中身もピンキリだったりするのですが、1961同一ビンテージではセスタンテ向けの57%が高い評価を受けています。あのパワフルで濃厚、そして妖艶なシェリー感は、ちょっと反則なリリースですよ。。。

一方このボトルは加水ですが、飲んでみると近い時期の蒸留表記があるオフィシャルマッカランを思わせるような、ベリーやランシオ漂う古典的なシェリー感。ウッディネスは熟成期間が30年弱であるためそれなりに強いですが、加水であることで程よい程度に止まり、これはこれでバランスの良さがあります。
それこそ、一日中の終わりにこれを飲めたらどれだけ癒しになるだろうかという感じです。

(Sandrieさんにてテイスティングした、1958年蒸留のマッカランオフィシャルボトル。シェリー感では今回のボトルにも通じるところがあり、時代の共通項を感じさせる。この1杯、文句なく至福のひととき。)

グレンリベットは1966年にフロアモルティングを取りやめるなど、他の蒸留所同様に近代化を進めているようです。
当時グレンリベットを傘下としていたグレングラントもまた、この時期より前の原酒は、特有のフルーティーさが麦由来の要素に感じられるだけでなく、田舎っぽさに通じる土っぽいピートが、いい仕事をしているように感じられます。

もはや想像の域を出ない話ではありますし、結局ここに帰結してしまうのですが、ゼファー種、フロアモルティング、1960年代前半までのシェリー樽。これらはウイスキーにおける失われた3種の神器なのではないかと思うのです。
最近飲み始めた飲み手に是非経験してほしいと思う反面、失われた時代のものであると割り切る気持ちも必要な、なんとも勧めにくいボトルです。

シングルモルトウイスキー松井 倉吉蒸留所 48% 2018年リリース

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今から約3年前、ある3本のウイスキーがリリースされ、ジャパニーズウイスキーブームを追い風にして良くも悪くも注目を集めました。

銘柄は「倉吉」。鳥取県の倉吉市にある松井酒造合名会社(以下、松井酒造)がリリースしたピュアモルトウイスキーは、
・輸入原酒を使って作られていたこと。
・同社は当時自社蒸留をしていなかったこと。
・PRやデザインが紛らわしかったこと。
・価格が微妙に高かったこと。
・消費者からの問い合わせに対する回答等が火に油であったこと。
など、様々な要因が重なり合い、"おそらく"という前置きを使う必要がないほど、多くの愛好家から嫌悪され、あるいは嘲笑の対象となったことに異論の余地はありませんでした。


(当時のまとめ記事:松井酒造 ピュアモルト倉吉に見るジャパニーズウイスキーの課題→ご参考) 

ピュアモルトウイスキー倉吉の存在を前向きに捉えるとすれば、酒税法とジャパニーズウイスキーの定義を見直すきっかけとして、業界全体を巻き込んだ動きに繋がったことは、ある意味評価出来るかもしれません。
しかしGoogle評価で★1.8(2019年1月時点)という、ウイスキーメーカーとして異例の低さにあるように。浸透したマイナスイメージによって、何を書いても「あの松井が」とネガティヴに取られる土壌が出来上がってしまったことは、逃れようも無い事実でした。

そんな彼らが「いずれは鳥取の地に蒸留所を作りたい(そこに観光客を招きたい、地域を活性化したい)」とする言葉を発信したとき、それを信じた人は少数だったのではないかと思います。
しかし昨年ポットスチルが導入され、一部国産麦芽を使う蒸留計画と共に蒸留所が一般公開を開始。その過程で、実は1000リットル程度の小規模なアランビックタイプのスチルが手元にあり、2017年ごろからウイスキー蒸留が行われていたことも明らかとなりました。
結果論でしかありませんが、彼らの計画は本当だったのです。

(創業した倉吉蒸留所外観と2018年後半に導入された、ポットスチル。中国製だがラインアームの角度が調整可能というユニークな機能を持つ。同社公式Twitter より引用。)

(松井酒造が2017年頃から使っていたというアランビックタイプのスチル。長濱蒸留所に類似の形状だが、同社との関係はないとのこと。同社WEBサイトより引用。)

これら蒸留設備の公開とほぼ同時期に発表されたのが、今回レビューする松井シングルモルト、サクラカスク、ミズナラカスク、ピーテッドモルトの3種です。
使われている原酒は、新設されたポットスチルではなく、上記写真のアランビックタイプのスチルで蒸留され、1年半程度熟成されたもの。他社のリリースで言えば、ニューボーンですね。
松井酒造の今後を測る原酒とは言い切れませんが、少なくとも日本で仕込み、蒸留された原酒となります。

その酒質は、モノによって良し悪しハッキリと言いますか。。。
ノンピートであるサクラとミズナラは、未熟感の少ないクリアで品のいい甘さや酸を感じる麦芽風味主体の酒質。多くの愛好家が抱いているであろうネガティヴイメージは払拭しないまでも、日本のクラフトの中でそう悪い部類ではなく、むしろ初年度の蒸留としては好感を持てる要素もある。樽次第では4〜5年程度でそれなりに仕上がりそうです。

また、リリースは48%まで加水されており、加水と仕込みには兼ねてより松井酒造が"最も重要"とプッシュしてきた大山の伏流水を使用。影響がどの程度かはわかりませんが、ニューメイクであることの荒さを差し引いて、確かにマイルドで柔らかさが感じられます。
一方、悪い方がピーテッド。これは蒸留で何かミスしたのか、あるいは樽の処理か・・・焼けたゴムや溶剤のような不快なニュアンスが感じられ、ただただ閉口モノでした。

使われている樽はピーテッドが古樽のバーボンバレル。サクラ、ミズナラは同じくリフィルのバーボンバレルの鏡板のみを変更したもの。
サクラやミズナラはそれ単体で使うと非常に個性の強い木材であり、過去に該当する樽で熟成させた別蒸留所の原酒は飲んだことがありましたが、新樽なら1〜2年も貯蔵すれば前者は桜餅のような、後者はニッキのようなニュアンスが強く出てきます。
今回はアメリカンホワイトオークとの2コイチ樽。熟成期間が短いことも作用して、樽感という点では酒質を殺さない程度のアクセントで、それぞれうまく作ってあるように感じました。

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THE MATSUI
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY
SAKURA CASK
700ml 48%

品のいいオーク香、微かに乳酸、乾いた麦芽。
とろみと共にスパイシーな刺激のある口当たり、比較的クリアで嫌味は少なく、柔らかい麦芽風味主体。ほろ苦く長い。
あまりサクラっぽさはない。
加水すると少し感じられ、微かに桜餅っぽさ、ハーブのような植物感と酸味が混じるようになってくる。

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THE MATSUI
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY
MIAZUNARA CASK
700ml 48%

微かにスパイシー、ニッキ、荒さを伴うウッディな香り立ち。スワリングしているとおしろいっぽい麦芽。
やや水っぽいが麦芽風味と淡くウッディで微かに乳酸を感じる口当たり。余韻はビターでドライ。ひりつくような刺激を伴うフィニッシュ。
加水は比較的麦系が伸びる。酸のある嫌味の少ない麦芽香だ。

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THE MATSUI
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY
PEATED
700ml 48%

スパイシーで焦げたゴムと粘土、発酵した醤油、奥には未熟原酒の硫黄系のニュアンス。口当たりはマイルドだが焦げたゴム感やプラスチックのような溶剤系の要素、粘性がありビターな余韻 。
かつてリリースされていたモンデ酒造の笛吹峡を彷彿とさせる。個人的に非常に不快であるが、これが好ましいという方もいるらしい。(特に海外)


今回のテイスティングは、日本酒を中心に扱うIMADEYA銀座で開催された角打ちイベントにて行いました。
現場に居た営業の方からは、どのように作られているのか、あるいは売る側としての心境などもお聞きしましたが、やはり上述のネガティヴイメージもあって、国内販売ではだいぶ苦労しているそうです。(結果、海外や免税店に販路を求めたり、今回のように日本酒等他のユーザーを開拓に動くわけですが、それもウイスキー側からポジティブに取られない悪循環。。。)

今後は誤解のないように、このイメージを払拭するようにしていきたいとする販売員の方。
ただ今回のリリースに限っても、新しいスチルで蒸留していないのに、勘違いさせてしまうような説明ぶりになっていたり。ウイスキーとしてはまだ未熟な域を出ない熟成年数でありながら、それを表記せず"極上の一滴"やら盛り感拭えないPRがされていたりと、「そういうとこやぞ!(笑)」と思わず突っ込みたくなるような要素は未だ健在です。

同社の体制については定かじゃありませんが、察するに「とにかくぶちあげたれ」的な方針の決定権を持った人が居るのかもしれません。
大手企業の製品が市場の大半を締める中では、そうした考えや危機感もあるのでしょう。ですがその姿勢が反感を招くことに繋がり、どんなに良いものが出来てもこの会社の製品は飲みたくない、という残念な状況が変わることはない、むしろアンチの増加に繋がる可能性も考えられます。

自分はウイスキーは味が一番重要なファクターだと思っていますが、嗜好品である以上、作り手の想いや姿勢、歴史など付随する様々な情報を無視していいわけではありません。逆にそうした面を重視する愛好家もいます。
今回のリリースを飲んでの心境は「3歩進んで2歩下がる」。松井酒造が愛好家の信頼を得ていくには、まさにウイスキーが熟成する期間になぞらえ、荒さが穏やかになるよう真摯に誠実に製造・販売をして、長い時間をかけて信頼を回復していく必要があるのだと思います。
確かな一歩は感じることが出来ましたが、まだまだ時間がかかりそうですね。

ボウモア 12年 2000年代流通 カモメラベル 40%

カテゴリ:
bowmore-12-2000-tasting
BOWMORE
ISLAY Single Malt
Aged 12 years
2000's
700ml 40%

グラス:国際規格テイスティンググラス
場所:お酒の美術館 神田店
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(6)

香り:スモーキーで塩気とともに黒砂糖やチョコチップクッキーの甘みを思わせるシェリー感、土っぽさ、薬品香に加え、ほのかにダシ系のニュアンスを感じさせる。

味:マイルドな口当たり。かりんとう、プルーンなどの熟した果実、ベーコンのような塩気と脂っぽさ、そしてピーティーな風味。
ややボディは緩く余韻は湿ったようなウッディさ、鼻腔に抜けるヨードとスモーク、タンニンが蓄積する。

シーズニング系のシェリーのニュアンス、そこにボウモア特有の熟したような果実味が感じられる。加水で少々強引に整えたような酒質部分が緩めの構成ではあるが、これはこれでおいしいモルトである。 


そう言えばこのラベルのボウモアもだいぶご無沙汰だなあと、久々にテイスティング。確かこの時代のラベルは、2006〜7年ごろに現行品に続く肩張りボトルに仕様が変更されたと記憶しています。
香味から察するに、今回のボトルはその間際の流通。原酒は全てサントリー資本が入ってからの1990年代前半の蒸留だったのでしょう。所謂パフュームフレーバーがなく、特有の熟した果実を思わせるフルーティーさが特徴として感じられます。
(サントリーのWEBサイトの記載がなく、www.morrisonbowmore.comのみの表記なのも時代を感じる要素です。)

また、久々に飲んで感じたのが、結構シェリー系のニュアンスが強いということ。原酒はシェリーとバーボン樽の混成だと思いますが、その中でファーストフィルのものがエッセンスとなっているのか、あるいはリフィルシェリーの比率が高いのでしょう。
こってり濃厚シェリーと言うタイプではなくあくまでバランス型ですが、香味の要所要所でシェリー樽原酒由来のアロマ、フレーバーが主張してきます。

(今回のボトルの1世代前にあたる、シルクプリント時代のボウモア12年。この時代のラベルデザインは素晴らしいのだが、フローラルなパフュームフレーバーが好みを大きく左右する問題児であった。)

サントリー傘下でのボウモアのラベルは、
・1990年代のシルクプリント時代
・2000年代中頃までのカモメラベル(丸肩ボトル)
・2000年代後半から2017年のカモメラベル(肩張りボトル)
そして現行品の白壁ラベルへと続いていきますが、スタンダード品のボトルの中で、好ましい要素が揃っていたのは両カモメラベル時代であったと今更ながらに思います。

現行品が必ずしも悪いと言うわけではないですが、紙っぽさや溶剤系の要素が目立っており、ストレートで飲むなら個人的には前時代を推したいところ。
そのカモメラベル(肩張りボトル)は、酒質がやや軽くなった印象こそあるものの、バーボン系の樽感からフルーティーさはわかりやすくなっており、時代時代のリリースで、メーカー側の方針というか、貯蔵していた原酒の方向性がわかるようにも感じます。

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