オールドクロウ 7年 (1969-1976) 100プルーフ ボンデッド

カテゴリ:
IMG_20190908_162029
OLD CROW 
KENTUCKY STRAIGHT BOURBON WHISKY 
BOTTLED IN BOND 
1970's 
(Distilled 1969) 
(Bottled 1976) 
750ml 50% 

グラス:国際企画テイスティンググラス
時期:不明
場所:BAR BLACK HEART 
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:メローで華やか、熟した梅のような穏やかな酸と、メープルシロップやバニラの甘味。穀物感とこなれた香ばしさが、ワッフルのような洋菓子を思わせる。

味:香り同様にメローでコクのある口当たり。序盤はグレーンの甘味がメインにあるが、徐々に熟したオレンジのような酸と軽いスパイシーさ、品の良いウッディネスが口内に染み込む。
余韻はスパイシーでウッディ。じんじんとしたハイプルーフ由来の刺激が心地よく、振り子のように収束していく。

メローで度数よりも香味とも柔らかく、それでいて骨格はしっかりとしている。経年も合わさった熟成感が心地よいバーボン。これもまた現行品とは別物で、余韻に変なえぐみや渋みもなく、ストレートでも負担なく飲める。今回はストレートのみだったが、ロックも試してみたい。

IMG_20190908_162402

先日レビューさせていただいた、禁酒法前のオールドクロウ100proofとの比較でテイスティングしたもの。同じくBOTTLED IN BOND 仕様の流通時期違い。
ですが今回のレビュー記事では、禁酒法時代との比較や香味分析ではなく、飲んでいて疑問に感じた、オールドクロウの歴史における”凋落”に関して自分なりの考えを書いていきます。

1970年代、蒸留所と共にオールドクロウの版権を持っていたのはNational Distillery社。オールドグランダッドやEHテイラー等を販売していたメーカーです。(※取得した時期は1920年とも30年代とも言われている。)
当時同社ではすぐに出荷出来る工業用アルコールの生産に重きをおいていたとのことで、蒸留所も1960年代に蒸留器の変更含む大規模な改装工事を実施し、原酒製造プロセスにおける生産量の増加と効率化(コストダウン)が図られたとされています。

IMG_20190908_174729
(オールドクロウ1912-1919とオールドクロウ1969-1976、現代から100年を遡るテイスティングで、今回のボトルは50年前に置かれたマイルストーン。詳細は不明だが、マッシュビルは禁酒法前(左)がライ比率高め、今回の蒸留所改修後がコーン比率高めで、現在に近いスタンダードなレシピであると思われる。禁酒法前ボトルのレビューはこちら

オールドクロウはかつてアメリカで一番売れた、バーボンの花形とも言えるブランドでしたが、1970年代から80年代の市場において凋落が始まります。
その背景には1960年代の蒸留所改修後、新たに導入した製造行程にミスがあって味が落ちたことに加え、それを解決せずに操業を続けたメーカー側の姿勢があった・・・という話が伝わっているのですが、不思議な話、その時代の真っ只中にある今回の1本は、言うほど悪い味とは思えません。っていうか普通に美味しい。

確かに当時のND社は、パフュったグランダッドやギルビーズジンなどの別件があります。
あるいは熟成年数の短い、スタンダード品のみ影響が大きく、熟成の長いものはネガティブな影響が樽の効果で打ち消されていたなら理屈はわかります。
実際、当時は今より樽材の質が良かったと考えられ、今とは異なるマイルドな味わいや果実風味はオールドバーボンの魅力でもあります。
しかし以前飲んだ70年代流通のスタンダードも、ソフトですがメローでそこまで悪い味か?という感じでした。蛇足ですが、松田優作が「旨い」と言ったエピソードがあるのもこの時代のオールドクロウなんですよ。(映画の中なので、なんの基準にもなりませんが(笑))。

個人的な予想をすると、製造行程のミスは事実として、同社のなかでバーボンそのものの販売力の低下。即ちブランドの優先順位の調整があり、PRが減ったなかでジムビームなどのライバル銘柄や、あるいはスコッチなど他の酒類の台頭とか、そういう外的要因のほうが大きかったのではないかと。
失礼ながら、スタンダード品はコーラとかセブンスターで割って飲むようなことを主としていた市場で、ベースの味が落ちたという理由でブランドが凋落するとは思えないのです。

1987年、オールドクロウはジムビーム社に買収され、問題となった蒸留所も閉鎖。同銘柄用の貯蔵庫としてのみ現存することとなります。
なお、先日ニュースになったジムビーム蒸留所の火災は、このオールドクロウ蒸留所跡地にある貯蔵庫群の一部で発生したものでした。
ジムビーム社買収後のオールドクロウは3年熟成で、バーボンの基準を満たすなかでは若い部類。自社ブランドであるジムビーム以上の優遇はするはずもなく、低価格路線にすっかり定着しています。
自分の記憶が正しければ、火災を受けたジムビーム側のコメントに「あそこにあるのは若い原酒だから被害は少ない」というのがあったと思いますが、年数、市場価値、それらを踏まえて確かになるほどと。
なんとも諸行無常、あるいは栄枯必衰というやつですね。

IMG_20191016_125530
今日のオマケ:ジャックダニエル ボトルドインボンド 1.0L 50% 免税向け

ワインクーラーにウイスキー突っ込む展示センスはどうしたものか、とは思いますが、こういうのも出ていたのかという1本。BOTTLED IN BOND表記が復刻版のようで、なんともそそられますね。
調べてみて、日本にも平行品が入っているのですが、全く気づいていませんでした(笑)

高い度数らしい骨格のしっかりした口当たりに、ジャックらしいメローさと焦げたウッディネスが合わさって、それなりな仕上がり。熟成年数は5~6年くらいでしょうか。多少近年のバーボンに見られるえぐみというか、ネガ要素もありますが、変にドライさや酵母っぽさも目立たず、ロックで飲んだら良さそうです。
ただしジャックダニエルの50%仕様のものだと、シルバーセレクトやシングルバレルがあり、値段もそう変わらない(味は樽の効き具合に違いはあるが、この2本のほうがリッチ)ので、辛口なことを言うと中身を考えた時に日本でこれをチョイスするのは・・・ラベル以外に難しい気がします。

オールドパー カスクストレングス 2003 モルトウイスキー 58.8%

カテゴリ:
IMG_20191015_043812
OLD PARR 
CASK STRENGTH 
MALT WHISKY 
BOTTLED IN 2003 
750ml 58.8% 

グラス:国際企画テイスティング
時期:開封後1週間程度 
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★★(6)

香り:酸のある麦芽香が力強く、干し藁や微かに白粉、モルティングしたばかりの麦芽を思わせるアロマ。そこからじわじわとエステリーで林檎のコンポートを思わせる甘みとフルーティーさ。時間経過でバニラ、蜜のような要素もある。

味:口当たりはパワフルで、一瞬の粘性の後で一気に広がるような感覚。香り同様に麦芽風味主体、バニラの甘みからはちみつレモンとスパイシーさ、柑橘のニュアンスがウッディなほろ苦さを伴いつつ広がる。
余韻は内陸系のピートフレーバー、スモーキーさがあり、軽いえぐみを伴って染み込むように残る。

基本的には80年代前半あたりのクラガンモア。ピートフレーバーは同時期のクラガンモアだろうか。プレーンな樽使いはディアジオらしさであり、酒質を軸にした香味が複雑さを構成する、リッチなモルトウイスキーである。こういうブレンデッドモルトは大歓迎。少量加水すると麦芽風味が強く感じられ、口当たりはマイルドに。ただし時間経過で酸が強く感じられるようでもある。

IMG_20190501_224529

2003年にリリースされた、オールドパーのブレンデッドモルトでカスクストレングスという意欲作。ロットNo,がAとBで2パターンあるようで、今回はAなので初期のほうと推察。
使われている原酒の熟成年数は、香味の系統から20年くらいでしょうか。ディアジオ系列らしい樽使いで、2ndまたは3rdフィルのプレーンオークで熟成されたような構成が、ハイプルーフ仕様と合わさって原酒のキャラクターをしっかり感じさせてくれる、リッチ(贅沢)なブレンデッドでした。

2000年代前半はディアジオやモエヘネシーがウイスキーのブランド価値向上のため様々なリミテッドを積極的に展開し始めており、多くのブランドでリミテッドがある非常に面白い時期です。
ただ、シングルモルトのブランド向上を意図したキャンペーンの中にあって、ブレンデッドモルトとは言えオールドパーは異色の存在。しかもジョニーウォーカーではなく、です。
残る情報から察するに地域限定品だったとも考えられ、1990年代の冬の時代を経て、今後何がヒットするのかを模索していたのかもしれません。 (元々オールドパーはアジア方面への輸出向けで、大きくシェアを伸ばしたブレンドでしたので、アジア方面での同銘柄の可能性を探ったのかもしれません。)

オールドパーといえば、キーモルトはグレンダランとクラガンモア。近年のオールドパーは、どちらかと言えばグレンダランのキャラクターを感じますが、今回のブレンドにはクラガンモアのキャラクターを強く感じます。
仄かに酸のある樽感に、麦芽風味と内陸系のスモーキーフレーバー。ピート由来のニュアンスはクラガンモアで、比率的には7:3くらいか。
1980年代前半の仕込み主体と思われるそれらの原酒は、今よりも厚みがあり、先に触れたように樽感で後付けされない骨格のしっかりしたフレーバーを楽しめます。

その違いは現行品のオールドパーを飲めば瞭然ですが、グレンダランやクラガンモアは近年にかけてどんどん没個性的で酒質が軽くなっており・・・比例するように現行品のオールドパーもずいぶんボディの軽い仕上がりになってしまいました。
最近のオールドパーはハイボール溶液と化していて、開き直ってチルフィルがっつり効かせたオールドパー・シルバーまで出してきているのですから、この味はもう作れないんだろうなと、同時に思わされるのです。(それが不味いというわけではなく、使い勝手の良いブレンドではあるのですが・・・。)

IMG_20191014_204121
今日のオマケ: アルベーヌ・ビショー・コート・ブルギニョン2014
アルベーヌ・ビショー社はキリンさんが取り扱っているワインメーカーで、今回のはデイリークラスのワイン。お値段1000円代後半です。

使用品種はガメイとピノ・ノワールとのこと。ガメイがメインなのか、ピノの透明感を帯びた酸というよりは、露骨なイチゴジャム感があり、余韻にかけてタンニンも存在感を増してくる。
ただしそのジャム感が致命的にしつこくないというか、まとまっている点は上手い作り。スルスルと飲めてしまう。嫌いじゃないぜ、こういうのも。。。
そう言えば今年のボジョレー解禁がもうすぐですが、ヌーヴォーだけじゃなくてこういうのも飲んだ方が良いと思うんですよね。

グレンドロナック オリジナル 33年 2000年代流通 40%

カテゴリ:
IMG_20190728_194605
GLEN DRONACH 
ORIGINAL 
AGED 33 YEARS 
2000's 
Matured only in the Finest Oloroso Sherry Casks 
700ml 40% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:個人宅
評価:★★★★★★★(7)

香り:ふくよかで広がりがあり、色濃い甘さと熟したベリー系のニュアンスを伴うダークフルーツのアロマ。カカオチョコレート、濃く入れた紅茶。古びたウェアハウスにあるような湿った落ち着きのあるウッディネス。求めているものがある。

味:含み香はリッチだが口当たりは緩く、中盤は平坦で広がりに欠ける。カカオチョコレート、薄めたベリーシロップ、微かに黒土。じわじわと樽由来のタンニンが、キャラメルナッツを思わせる甘味と香ばしさと共に舌に染み込んでくる。
余韻はウッディでビター、ややドライだが鼻腔に抜ける熟成香はオールドシェリーの要素をまとっている。

香りは素晴らしい、往年の愛好家が求めるシェリー香があり、これぞシェリー樽熟成のドロナックといえる要素を持っているが、加水が効きすぎていて口当たりはスムーズだが全体的に緩く、起伏に欠ける。それでいて余韻は熟成の長さからか樽が強くあるのが悩ましい・・・。
香りは★8クラスだが味を加味すると少々物足りないため、評価に幅をもうける★6ー7とするかも悩んだ。加水はせず、ストレートで。

IMG_20190728_194629

2005年頃にリリースされていた、オフィシャルハイエンド。実に7~8年ぶり、本当に久々にテイスティングしました。
結論から言うと決して不味いとは言いませんし、ソレラ排出の古樽熟成と思われる1本ですが、以前飲んだ時のまま、物足りなさを感じる印象は変わりませんでした。

ドロナックと言えばシェリー樽熟成ですが、2000年代にサントリーが取り扱っていたグレンドロナック・オリジナルのスタンダードは、シェリー樽熟成の後でバーボン樽フィニッシュという不思議な仕様の12年モノしかスタンダードがないなく。熟成年数でダブルスコア以上の間をあけて、ハイエンドの33年だけがオロロソ100%というラインナップでした。
価格は当時で30000円強。それでいて40%加水。決して悪くはないボトルですが、とうじにしては高価格だったのと、親会社が変わって2010年頃からリリースされた同時期蒸留のリミテッドエディションが同じ価格帯でリリースされたこともあり(また、その中身が素晴らしかったこともあり)、この33年モノは暫く売れ残る事となります。

長期熟成に伴うウッディさ、タンニンを抑えるためには、ある程度加水での"ならし"は必要だとは思います。
ただこれを登山に例えるなら、アスファルトで完全舗装された登山を愛好家が望んでいないように、ある程度起伏と変化に飛んだ道なりと景色が、テイスティングにおいても必要だと思うのです。
特に香り(登る前に見えた山の姿)で期待させられた後で・・・となれば、いざ上ろうとしたらアスファルトはおろか、エスカレーターまで整備されていたような印象はぬぐえません。
まあ万人向けとしては、これくらいでちょうど良いのかもしれませんが・・・。

些か抽象的な駄文が過ぎましたが、今回のボトルの中身は1970年代前半(恐らく1970年や1971年あたり)のオロロソシェリー樽熟成原酒。それゆえ、その当時のグレンドロナックが備える、特徴的なベリー感を纏うシェリー香が香り立ちに感じられ、加水も合わさって角がとれ、我々愛好家が求めているオールドシェリー香がしっかり備わっています。
先に触れた、後にリリースされる1970~1972あたりのリミテッドリリースや、グランデュワー等との共通香があり、間違いなく同じ時期の原酒を使ったものと考えられます。

ただ、ほぼ同じ時期の原酒が使われている1980年代後期のオフィシャルのクリアダンピー18年に比べ、香味の平坦さ、広がりの弱さが否めないのはやはり熟成期間の長さ故か。一概に加水調整して整えるにしても、どこでバランスをとって仕上げるか。そして香りと味でどちらに重きをおくか。長期熟成シングルモルトの素晴らしさと共に、難しさを感じる1本でした。

このページのトップヘ

見出し画像
×